第12話 日曜日 その3

 咲子とゲームを始めて、一段落着いた時に時計を見たら、お昼の時間のまっただ中である。

 今日のお昼ご飯は、ゲームに熱中して作る気が起き無かったのと、外も暑い事も有って外食する気が無かったので宅配ピザを頼む。

 ピザは俺も好きだし咲子も好きだから、すんなりとお昼ご飯のメニューに決まった。


『ピンポーン♪』


 玄関チャイムが鳴る、恐らく宅配ピザが来たんだろう。

 俺は応答する。


「は~い?」


「○×ピザです!」


 部屋の中から返事をして、相手がそれを気づき返答する。すばらしい壁だ!

 俺は玄関を開けて、ピザを受け取り代金を支払う。


「咲子。ピザ来たぞ~」


「以外に早かったね!」


「そうだな。お盆休みで注文も多いはずなのに…」

「まあ、良いや。さて温かい内に食べよう!」


「私、宅配ピザ久しぶりだよ!」


 咲子は嬉しそうに言う。


「そうか?」

「なら良かった。宅配ピザはこの家では初めて頼んだよ」


 俺は、お皿等の準備をしながら言う。

 そして、ピザと言えばコーラ!

 咲子のために買って置いた、ペットボトルのコーラを一杯貰う。本当はビールが良かったが『ダメ!』と言われて冷蔵庫に戻された……

 準備が出来て、2人で『いただきます!』をしてピザを食べ始める。

 

「ファミレスとかのピザも美味しいけど、宅配ピザも美味しいね!」


 ピザにかぶりつき、伸びたチーズを手で切り離しながら咲子は言う。


「うん、旨いな!」


 美味しい物を食べると無口に成ると良く言われるが、まさに今がその通りで有る。

 ピザは時間が経つと、チーズが冷えて固まって美味しく無くなるし、生地も硬くなるので温かい内に食べきるのが良い!


 頼んだピザはLサイズで、Lサイズの量は3~4人前のはずだが、俺の予想よりも見る見る内にピザのピースが消えていく……

 俺もピザは好きだから人の事は言えないが、咲子は俺以上のスピードで食べている!?


(昨日も思ったが、体の割に良く食べるな。あんなに食べていたっけ?)


 昨日の夕飯はそうめんで、俺は余っても良いやのつもりで、咲子に1袋全部茹でて貰ったら、2人で綺麗に平らげてしまった。


(母さんも昔は良く食べていたらしいが、母さんのその血まで引き継いだか?)


「お父さん、もう食べないの?」


 俺の手が動いていないのを気づき、咲子は声を掛けてくる。


「あっ、いや……咲子って、そんなに食べていたっけ?」


「?」


「あっ、いや、気にしないでくれ」


「育ち盛りだしね!」


 そう言いながら咲子は、ピザのピースを新たに取って口に含む。


(お腹壊したとかは言ってないし、良いか)


 咲子に全部食べられる前に、俺も急いでピザのピースを取った。


 ……


 結局、Lサイズのピザは綺麗に無くなり、休憩と軽い片付けの後、午後の部のゲームが始まる。

 昼からのゲームは俺が初めてプレイするのばかりだった。次にやったゲームは、キャラクター同士で墨を掛け合うゲームで通称“タコちゃん”と言うらしい。

 これは俺にとっては苦手なゲームで有ったらしく、直ぐに墨を掛けられてしまう。

 まあ、それでもゲームを楽しみ、他の対戦出来るゲームを楽しんだ。


 ☆


 日がだいぶ傾いて来たなと感じつつ俺は時計を見る。


「そろそろ17時か……。ずいぶん遊んだな」


 丁度、1つのゲームをやり終えた所でも有る。


「そうだね! キリも良いしそろそろ終わる?」


 結局、対戦ゲームで咲子に満足に勝てたのは1つも無かった。まあ、当然と言えば当然だが。


「咲子。終わろうか……」


「じゃ、おしまい」


 そう言って咲子は、ゲーム機(ブレーカー)本体のスイッチを切る。テレビ画面は、先ほどまでの華やかな画面から真っ暗な画面に変わる。


「……」


 俺はしばらく真っ黒な画面を見る。


(咲子が来てまだ3日目。この先の展開が読めないが、俺は明日から仕事だしな)


 俺が勤めている会社は、お盆休みは無い会社だ。休みたければ有休を使う。ブラックに近い会社だ。

 年頃の娘だから、出来れば居る間はずっと休暇を取りたいが、人手不足の応援で来ているのに、応援者の俺が長期に休暇を取ってしまったら、応援の意味が無くなる。

 そこまで会社に忠誠心は無いが、俺の現場(仕事)はチームで動いている。他の方々も同じように仕事しているのだから甘えは許されない。


 ゲーム機を片付け終えた咲子が戻ってくる。


「お父さん。今日はどうするの?」


「えっ、何を?」


 まだ何かをしたいのだろうか?


「夕方なんでしょ! 晩ご飯とかどうするの?」


「ああ、そっちの事か!」


「お父さん。何だと思ったの?」


「いや、まだ何かしたいのかと思って……」


「流石にこの時間からは……、お父さんが良いなら言うけど?」


 咲子はまだ隠し球を持っているらしい……


「いや、今日はもう終わろう…」


「そうだよね。夕方だし…」


「う~ん、晩ご飯か…」


 俺は呟きながら台所に向かい、冷蔵庫を開ける。


『パカ!』


「ろくな物しか無いな。1人なら何とでも成るが、2人は厳しいな…」


『パコ!』


 冷蔵庫の扉を閉じる。


「なぁ。咲子は外食と家ご飯どっちが良い?」


「そんなの言うまでも無いよ。お父さんの料理が良いに決まってるよ!」


 咲子はにっこり笑顔で言う。


「そうか……」

(今日あたりはサボろうかなと思ったが仕方無い)

「じゃあ、晩ご飯の買い出し行くか!」


「えっ、じゃあ、着替えなきゃ!」


 咲子は体の向きを変えて着替えに行こうとする。


「良いよ、良いよ。一昨日行ったスーパーだからその格好でも」


「えっ? そう」


 咲子は半袖のワンピース風の服を着ているが、色あせもしていないし、その格好で外に出ても問題無い思った。


「え~、ちょっと子どもっぽく無い?」


「そうかな? 俺は良いと思うぞ!」


「なら、これで買い物行く!」

「でも、身だしなみは整えてくるね!」


 そう言いながら咲子は洗面所に向かった。


(本当は、初日に来た格好の方が余程、子どもっぽい格好なんだがな…)


 その部分を突っ込むと、また怒りそうなので言わない事にする。


(さて、俺はこの格好では外には出にくいから着替えるか)

(あっ、洗濯物を仕舞い込んでからにするか)


 ベランダに干してある洗濯物を仕舞い込んで、出掛ける準備をする。

 俺の格好は短パンにTシャツ。このままでも買い物に行けない事は無いが、短パンだけでも変える事にした。

 短パンから綿パンに履き替えるだけだから直ぐに着替え終わる。自分の準備が終わる頃には咲子の準備は終わっていた。


 2人で晩ご飯の材料を買い行く。

 親子だけど父子家庭の気持ちだ……。夕方のまだ強い日差しを浴びながら、徒歩で近所のスーパーに向かった。

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