第8話 デート日和 その3

「ふぅ……。一巡りすると結構疲れるな」


 俺はスナックコーナーで買った、アイスコーヒーを飲みながら言う


「お父さんが運動不足なだけだよ」

「私なんかまだ平気! もう一回り余裕で行けるよ!!」


 咲子は笑みをこぼしながら、チキンナゲットを頬張る。


「そうかもな…」


 俺はそう言いながらたこ焼きを、つまようじで刺して食べる。


「きっとお父さんは運動不足なんだよ!」

「来週から、自転車で会社に行ってみたら?」


「ええ、無理だよ」

「車ですら30分以上掛かるのに、自転車で行ったら2時間以上掛かるよ」


「わあ、結構遠いんだね。すぐ近くだと思っていた」


「今の仕事先の周りは、本当に何も無いからね」

「有るのは田んぼだけだよ」


「じゃあ、寄り道とかも出来ないね」


「車だからあんまり関係ないけど、この近くまで来ないと何も無いね」


「あっ、そうか。車なら関係無いね。うん…」


 咲子は興味を失った様でジュースを飲む。


「さて、後は、晩ご飯の材料を買って帰る位か!」


 時刻は16時前だが、十分楽しんでくれたと思うし、そろそろ切り上げても良いかと思った。


「え~、お父さん。もうちょっと居ようよ!」


「まだ、遊び足りないか?」


「うん!!」


 笑顔で答える咲子。


「仕方ないな………。だけど、もう見尽くしだろ」


「ふふん。まだ、ゲームコーナーが有ります~~」


 咲子は得意げな顔をしながら言う。


「ゲームコーナーか……。分かった」


「あまり、乗り気じゃないね?」


「最近、行ってないからな」


「私も、そんなに行かないけどね!」


 なら、行かなくても良いのでは無いかと感じるが、黙っておく事にした。

 小休止の後、ゲームコーナーの有る場所に向かう。

 フードコートから、しばらく歩くとゲームコーナーに着くが、ゲームコーナーと言っても、UFOキャッチャー・メダルゲーム等が有る、簡易的なゲームコーナーだった。


「どこに有るかな~?」


 ゲームコーナー内を見回している咲子。


「あっ、あれだな!」


 咲子は目当ての物を見つけたらしく、奥の方に入って行く。俺もそれに付いて行く。すると、箱形の機械が見えてきた。


「プリクラか……懐かしいな。未だに有るんだ!」


 プリクラ……

 顔写真を撮って、それをデコレーションしてシール化する機械だ。一時は何処も彼処も、プリクラの機械が有った時代が有った。


「さっ、お父さん! 撮るよ!!」


「えっ?」


「えっ、じゃないよ。一緒に撮るんだよ!」

「もしかして、私1人で撮らす気?」


 不満げ言う咲子。


「いや、お父さん。こう言うのは苦手で…」


「1人で撮ったら意味ないよ! さあ、こっち来る!!」


 プリクラを一緒に撮るらしい。

 相変らず強気な娘だ。こんな娘でも、何時かは彼氏が出来る日が来るのだろうか?


「さて、どう言う風にしようかな♪」


 咲子はご機嫌顔でメニューを操作している。


(プリクラなんて、ほとんど撮った事無いな。学生時代は女性とは無縁だったし、母さんとも撮った事無いな…)

(まさか、咲子と撮る日が来るとは…)


「まあ、これで良いか!」


 咲子は撮りたい構図が決まったらしく、声を掛けてくる。


「じゃあ、お父さん。撮るよ!」


「あぁ」


 俺は観念して、プリクラを咲子と一緒に撮る。

 機械の指示に従って写真を撮っていく。証明写真の延長見たいな物だ。

 しばらくすると、先ほど撮った写真がモニター上に出てくる。


「♪~~」


 咲子はタッチペン見たいので何かを書き込んでいる。ハートを書いたり、文字を書いたりしている。結構しっかり書いている感じだ。


「もう、外、出ても良いんだよね」


「うん、大丈夫だよ!」


 一緒に居ると何だか恥ずかしいので先に外に出る。しばらくするとシールを持って咲子が出て来る。


「はい! これ、お父さんの分!!」


 咲子が渡してくれたシールを俺は見る。


「げっ!!」


 シールを見て思わずびっくりする!

 シールには、ハートマークや色々なデコレーションがされているが、一番びっくりしたのは『大好き❤』とでかでか書かれていたことだ!


「これは、ちょっと不味いんじゃない…」


「何で?」


「いや『大好き❤』は流石に……」


「そうかな?」


 咲子は『別に~』の顔をしている。


「こんなのまだ可愛い方だよ。もっと、いろんな事をする子だって居るんだから!」


 説得力の無い会話だが、名前が書かれている訳では無いし、万が一誰かに見られても『微笑ましい親子ですね!』と言われる事を願う事にした。


「えへ! お父さんとの初ツーショット!!」


 咲子はプリクラを見ながらニヤけている。


(そんなに嬉しい物かな?)


 俺は改めてプリクラを見る。

 2人仲良くの写真。中央の文字が気にはなるが、これも思春期の行動なのかなと考えた。


 ……


 その後は簡単そうなゲームをやって、目新しい物も無いのでゲームコーナーを後にして、食品コーナー(スーパー)に向かう。


「さて、次は晩ご飯だが、何が食べたい?」


 俺は咲子にリクエストを聞く。


「晩ご飯?」

「う~ん。館内にずっと居るから分からないけど、絶対外暑いよね?」


「天気予報通りなら、真夏日のはずだ」


「なら、冷たい物が良いかな?」


「冷たい物?」

「刺身……そうめんとか?」


「刺身は一昨日、お母さん達と食べたんだよね…」


「じゃあ、そうめん? でも、昼にラーメン食べたしな…」


「ねぇ、そうめんで良いんじゃない! そうめん位なら私でも茹でられるし。今日は、私が作るよ!!」


「咲子が良いなら、そうめんにするか」


「うん!任せて!!」

「美味しいの作るよ!」


 晩ご飯のメニューも決まり、材料を揃えて帰路に着く。

 帰りももちろん、バスに乗って帰る。

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