第13話 魔法×発毛


 私はライトという魔法に注目した。

そう! ハゲ頭に、喰らわす光魔法だ! 私のジェイは、歳を取っているせいか、頭がハゲている。


 空き時間を見計らい、ジェイにライトの魔法を当てて、魔法効果時間を上げる訓練をしていた。


 毎日毎日、ジェイにライトの魔法を唱え続けたら、何と髪が段々、生えてきた。


 私が毎日ジェイに、注目したからわかるのだが、着々と何故か、髪が増えていく。


 不思議に思い、キラに聞いてみた。


「光魔法は、厳密に言うと、回復魔法と光属性の魔法に、分かれるんだ。多分フィンは、回復魔法を、当てていたんじゃないかな? まぁ、そんな研究報告はないから、仮説でしかないけどね」


 しかし、この事が広まれば、大変な事になる。国中のハゲが、私の元に、長蛇の列で、押し掛けるからだ。


「先生! この事は内密でお願いします」


 私は切に、お願いした。


「まぁ知られたら、私にも影響がでかねないから、大丈夫だよ」


 成る程、キラも回復魔法を使えるのか...

先生と私の、二人だけの秘密が出来た。

全くロマンチックじゃないがな! 


「それより、フィンは、魔法の効果時間は増やせたかね?」


「はい! 三秒くらいまでなら...」


「成る程、後はセクシー値次第、という事かもね! 今は何セクシーだい?」


「まだ三百弱が限界です」


 そう! 私は毎週、セクシー値を測っていた。一様、着実に上がってはいる。


「フィンよ! シックスパックはできたかね?」


「はい! この通り」


 そういうと、私はお腹に力を入れて、自慢の腹筋を見せた。


「ならば、紙に書いた事は、毎日やっているのかい?」


 私は頷いた。


「ーー後は成長を待つしかないかな! ちゃんと、痩せ型をキープしなさい! ムキムキだと逆にセクシーは落ちるから」


 確かにムキムキのボディビルダーのマッチョが魔法使っても、何か絵にならない。


 やはり痩せ型マッチョが良いらしい。

薔薇を食べてたら、確かに、香水要らずの香りが、全身からして来た。


 将来は、モテモテ間違いなしだな!! 

魔法使いって、みんなモテるのではないかと、思ってきた。キラもよく見たら、輝いていた。


「先生は、ご家族とか、いらっしゃらないのですか?」


 私はキラが、刑期後も、ずっとこの屋敷に、住みついている事を、知っていたから、気になってきた。


「恋人なら、この両手で、数えきれないくらい、いるけどね」


 やはり、モテモテのようだ。


「恋人の方々は、心配なさっているのでは?」


 私は、そう言うと、キラは不敵に言い放つ


「私の行方を知らない恋人は、恋人失格だよ。いいかい! フィン! 魔法使いになったからには、町中に恋人を作りなさい。きっと、美系を意識して生きられるから」


 いやいやいや! それはもしかしたら、恋人じゃなくて、ファンだよね?

アイドルになれと?


 本当に、恋人が町中に出来たら、それはそれで、修羅場の連続ではないだろうか...


 キラはもしかしたら、恋愛愛憎劇から逃げる名目で、我が家に、隠れてるのではないのかと思い出した。


 実際キラは、屋敷に閉じこもり、外へはあまり出てこない。


 私はニャン五郎と、屋敷の周りを走る日課を、しているからわかるが、不審な女性が、チラホラいる。


 まさか...まぁ深くは、考えないでおこう。

キラは貴族の屋敷を、かなり気に入っており、冒険者暮らしなど戻れない! と言い張っていた。


 生徒である、貴族の私は、冒険者に憧れ、

かたや先生である、平民のキラは、貴族生活に憧れる。


 なんとも、チグハグではあるが、やはり貴族は、恵まれている方なのかも知れない。


 いや! キラは、貴族の責任である、仕事を、やっていないから、そんな事言えるのかもしれないがな...

私は、十歳になった。

私のライトの魔法のおかげで、ジェイは、笑顔が溢れていた。


「フィン様! 私は四十年以上、ルミエール家にお仕えして来ましたが、こんなに、嬉しい事はありません」


 そう! 一年以上、私の光魔法を浴び続けたおかげか、ジェイの髪がフサフサになったのだった。


 眉毛まで逞しくなって、繋がりかけたのは、ご愛嬌である。


 本で見るドワーフの様であった。

執事の癖に、野生味が出てきたジェイは、お酒も強くなったらしい。


 私の魔法は、愉快なフリーダムであったのだった。

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