第14話 悪夢×先生
小麦色の日焼けした身体に、引き締まったボディ! 金髪の髪をかきあげて、シックスパックを見せつけながら、私とニャン五郎は庭で水をかぶる。
ニャイルドだろう?
お日様の、日差しの強い、夏のこの時期は、これが何よりの、リフレッシュである。
「フィン様! はしたないですよ!」
ジェイに注意されるが、許して欲しい。私は、屋敷の周りを十周したばかりなのだからな!
まぁパンツ一枚で、庭で水浴びしている貴族など、私くらいだろう。
そろそろ、この歳になると、学校の入学試験対策で、貴族の子弟達は、勉強に力が入るらしい。
私も、授業がきつくなってきた。
テスト問題や実技試験が多くなる。
・礼儀作法問題
「コース料理の、ナイフとフォーク、スプーン、コップの位置を、正しくおきなさい」
私は、礼儀作法の先生の頭に、ナイフとフォークを、突き刺してやりたかったが、我慢した。
というか、私は、料理人でもメイドでもないのだよ!! こんな知識必要あるのかね?
私は、不思議に思いながらも、ナイフとフォーク、スプーンを全部コップに入れて、水を注ぐ。
やはりね! 綺麗に使いたいじゃん。
案の定、礼儀作法の先生から、ダメ出しを喰らってしまった。
・歴史問題
「ベアー王国の、設立年は何年でしょうか? 」
「解答、千百九十二年」
良い国作ろうなんちゃら幕府って、聞いた事があったからだ。
もちろん不正解だったらしい。
しかもそもそも、そんな年には、ベアー王国は、存在しなかったらしい。
現世はかなり、年数が進んでいるらしい。
今は、百世期目の、一万九年だそうだ。
そんなに、年月が経ち、まだ、前世の中世レベルって、どうなのだ?
・話術実技
「一人で、夜空を見ている女性に向かって、一言、声をかけて、彼女を笑顔にさせましょう」
やっときたよ! 私好みの試験が!
「あ! そこの綺麗な彼女! 落とし物だよ」
「えっ? 何ですの?」
私は飲み物入りグラスを二本持ち、片方を彼女に渡してこう言う。
「私との出会いを、落としてましたよ」
「いえ! 私のではございません」
私はこけかけた。見事なスルーである。
案の定、話術の先生は叱りだした。
「フィン様! 貴方のはナンパです! 貴族の華麗な、話術じゃあございません!!」
「ーーじゃあどないせえ言うねん!」
私は頭を抱えた。では、本当にどうしたらいいのだ?
・教養テスト問題
「ある武器屋で、八百ペルのナイフと、九百五十ペルの短剣を買いました。合計は、いくらになりますか」
解答千七百五十ペル
私は教養の先生から、はなまるを頂き、安心した。
・剣の実技稽古
どんな剣術も、斬り方は九種類しかないらしい。唐竹・袈裟切り・逆袈裟・右薙ぎ・左薙ぎ・左切り上げ・右切り上げ・逆風・刺突
私は、それぞれ、カカシに向かって斬りつけた。
剣術は、小さな頃から、父に習っていた為に、基本の型は大丈夫であったのだった。
しかし、その後、剣術の先生との模擬戦で、叱りつけられる。
「脇が開いています...もっと肩はリラックスして...左手がお留守ですよ...」
「はぁはぁはぁ!」
かれこれ三十分は木刀を振り回しているのだが、
剣術の先生に一撃も入らない。
私は、左手を、木刀の先まで伸ばし、刀は右手で、耳付近にもってきた。
一つ深呼吸をした後、走り出す。
「刺突空中式」
そう言うと、先生に向かって木刀を飛ばす。
しかし、先生に容易に払われてしまった。
「フィン様、真面目にやってください! 刀を投げたら、武器がなくなってしまいます。ふざけすぎです」
「ーーこれも技なのだ」
私は剣術の才能はないのだよ! なかなか難しい。
・ダンスの実技
私は、女性とペアを組み、モッコリ定吉の舞という曲を、踊らされる。
ネーミングセンスは、どうにかならなかったのかね?
踊る気が削がれる。
私は、何とか、やる気を出して踊るが、女性の足を、何度も踏んでしまう。
「アン、ドウ、トロワ、キャトールのリズム感が、全く出来てません!! しっかりしてください!!」
「ーーすみません」
意外にも、ダンスで怒られてしまった。
試験後、礼儀作法と歴史、話術、剣の稽古、ダンスの、それぞれの先生が集まり、困り果てていた。
「フィン様に教えて、もう三年くらい経ちますが、嫌いな事は、とことんやらず、投げ出すあの性格を、何とかしなくては...」
教師達は、父ベルギウスの元に行き、事情を説明し出した。
「やつら、チクリやがったなー」
私はその日、嫌いな授業の補習を延々とやらされたのであった。
なんてざまぁだ! 私はざまぁをしなければならないのに、ざまぁばかり、受けていないだろうか?
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