第3話 メイド×問題


 気がつくと私は、母親らしき人に、抱かれながら、あやされていた。


 何が気に食わなかったのだろう。

何故か、泣いていた。

あ! お腹が減っていたのだ。


 私は泣き止み、母親らしき人の胸を突く! 

さっさとミルクをよこさんかい! 


「まぁ! フィンたら、どうしたのかな? うん?」


 いや、この世界の言葉わからないし、そもそも、喋れないのだよ!! ジェスチャーでわかれ!! 


「アリア! どうだ? フィンは、泣き止んだか?」


 何か今度は、男性が現れたぞ! 父親ですか? 執事ですか? 私のジェスチャーに、誰でもいいから、気づいて!! 


 私は右手で、女性の乳房を掴み、左手の人差し指で、自分の口と女性の胸を、交互に指し示す。


「あうんああうん...」


 何とか声も出した。

しかし、伝わらない...

ん〜私のハートはロンリネス...


「フィンは、泣き止んだみたいだから、大丈夫でしょう。私達も休みましょう。アルファ! 後は、お願いね」


「かしこまりました。アリア様」


 あれ? 母親らしき人は、私をベッドに寝かすと、離れていく。 赤ちゃんが泣く訳が、わかった気がする。


 思わず、ため息が出た。

生存戦略の為にも、まずは、この世界の言葉を、早めに覚えないとなぁ...



 私は三歳になった。

ようやく、この世界の言葉が、わかるようになったのだ。赤ちゃんすげ〜


 まずは、何をおいても、魔法を使えるように、ならないといけない。

だって私は魔法使いを選んだからな! 


「アルファ? 魔法書というものは、どこにあるの?」


「そんなものはございません!」


「えっ? 無いの?」


 私は、衝撃事実を知った...完











 いや終われるか!! まだだ! 俺の物語は、はじまったばかりだ。


「では、魔法使いになるには、どうすれば良いの?」


「魔法使いとは、大変希少であり、才能が無いとなれません。生まれながら貴族であるフィン様には、必要ありません」


 何このメイド! 使えねー


 私は、自室を出て、廊下をよちよち歩いた。向かった先は、父親の部屋である。


 この世界の父は、

ベルギウス・マウル・ルミエール

という名前で、

我が家は伯爵という、貴族の地位を持っていた。


「と・う・さ・ま」


「おーフィン! どうしたのだね?」


 父ベルギウスは、一人息子の私に、甘々であった。


「あ・の・ね! ま・ほ・う・し・ょ・が・ほ・し・い・の〜」


 何故こんなゆっくり、赤ちゃん言葉を使っているかというと、転生者だとバレたくないのと、この喋り方だと、父母受けが良いのだ! 


「何故、魔法書が欲しいのかね?」


「ま・ほ・う・つ・か・い・た・い・の」


「はっはっはっはっは!」


 父ベルギウスは、豪快に笑う。

まるで、私が魔法使いになりたいだけの、餓鬼のようではないか!


 実に、失礼な笑いだ! 


「成る程! フィンは、魔法使いになりたいのだな? だが、お前は、文字が読めるのか?」


 私は首を振る。


「ならばまずは、読み書きから、はじめなさい! 読み書きをマスターしたら、買ってあげよう」


 午後の執務がはじまる前の、空き時間に、

私は、父ベルギウスの膝の上で、読み書きを教えて貰った。


 親がいるって、本当に良いものだな...

何か涙が出てくる。必ず、親孝行します。


 私は、父ベルギウスに甘え終わると、母アリアの部屋に行く。


「か・あ・さ・ま・ご・ほ・ん・よ・ん・で」


 すると、母アリアは、私を膝に乗せて、ルミエール伯爵武勇伝という、我が家の武勲が書かれた本を、読んでくれた。


 内容は何でも良かった。生まれ変わったら、両親とコミュニケーションをとり、捨てられないように、しなければならないという感情と、早く読み書きを、覚えたいという気持ちで、あったからだ。


 本日も実に、有意義な日であった。



 私は五歳になった。

今日は何やら、屋敷が騒がしい。

メイド達が、駆けずり回っていた。


 私は部屋の中で、黙々と、読み書きをやっている。だいぶ、出来るようになってきた。

今はメイドお手製の、問題用紙を解いてやったところである。


「流石はフィン様! ですが、些かおかしな所が、いくつかあります」


 私は、何が間違っているというのか、不満顔で、採点された問題用紙を返してもらう。

間違ったり、指摘された箇所を、見ていこう。


「問2 ぬるという言葉を使い、文章を作れ」


「解答 ぬ・る・ぬ・る・ね・る・ね・←×そんなものありません!」


 しまった! 前世の、あのよく食べたお菓子を、書いてしまった。


「問6 中を使い、文章を作れ」


「解答 う・ち・の・祖・父・は・獄・中・で・す・←いや、ちゃんと屋敷に、いらっしゃいますよ」


 文章としては、合っているが、失礼だったらしい。


「問10 (  )家が向こうに見えた。絵を見ながら、カッコ内を埋めなさい」


「解答 夜・な・夜・な・密・会・し・て・る・←まだそれを理解するのは、早すぎる!!」


 またまた、ツッコミが面白かった。


「問12 絵の女性は丁寧にケーキを作っています。何故でしょう?次の文章のカッコ内に、文字を埋めなさい。

絵の女性は、多くの人に(    )ケーキを食べて貰いたいから。」


「解答 く・た・ば・る・ま・で・←フィン様私は、ケーキ拷問を受けたくないです」


 またまたナイスな、ツッコミである。

意外と、やり取りが面白い。


「問13 落ち込む友人に、良い対応をして下さい」


「消・し・炭・に・な・る・が・良・い・←貴族の社交場で、絶対やめてください。正解は、落ち込まないでです」


 お洒落なジョークじゃないか! はっはっは!! 


「問20 釣った魚を塩でしめます。何故でしょうか?」


「解答 釣・っ・た・魚・が・生・意・気・だ・っ・た・か・ら・←×そのしめるではありません。」


 アルファには、私がどんな性格か、見破られたかもしれない。


 前世意外とヤンチャでした。すんません。

まぁなんやかんや、読み書きが出来るようになったのは、望ましい。


 私直属のメイドのアルファに、答案の質疑応答をして貰っていたら、下の階の大広間に呼ばれた。


 豪華な食事の数々に、ビックリした。

なんと、私の誕生日の、お祝いの、準備をしてくれていたらしい。


 サプライズというやつだな! 


「誕生日おめでとうフィン! 父さんからは、これをプレゼントしよう」


 父ベルギウスは、そう言うと、魔法書をプレゼントしてくれた。


 何て嬉しい日だ! 最高のプレゼントである。


「とても嬉しいです。大事にします」


 すると、母アリアは、大きな熊のぬいぐるみを、プレゼントしてくれる。


「あ、ありがとうございます」


 母アリアは、私の好みに、敏感ではないらしい。

幼児の時も、アピールしたのに、ミルクくれなかった事、多かったしな! 


 でも母アリアは、満足気である。


「本日は、素敵な誕生日を開いてくれて、ありがとうございます」


 私はちゃんと、みんなにお礼を言った。

もちろん祖父もいた。獄中じゃなかったようだ。

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