第2話 はじまり×転生
私の前世は、お世辞にも幸福だったとは言えなかった。
父と母は、私が生まれてすぐに離婚。
母は、私が中学に上がると、蒸発した。
その後は、必死でアルバイトを掛け持ち、生きてきた。新聞配達、チラシ配り、ホストにバーテンダーと、あらゆる事をやってきたが、彼女が出来た事をきっかけに、就職を決意した。
しかし、そこは、ブラックな企業だった。
心身ともに、身体を壊してしまい、四年後には、生活保護を受けて、精神科通いだ。
私が仕事を辞めたのをきっかけに、彼女は、音信不通になる。つまり、捨てられたのだった。
元々、誰からも本気で、愛された事のない私は今、布団の上で、苦しみもがいていた。
思い出すのは、唯一、楽しい思い出だった、うさぎの飼育である。
うさぎは良い。絶対私を見捨てたりしないし、私を必要としてくれた。
薄れゆく意識の中で、私が最後に思った事は、
父母への怒りでも、元カノへの恨みでも無かった。
私の後悔は、自分の人生を、好きに生きて来れなかった事への、悔しさである。
夢はサッカー選手だった...
たった一度の人生で、夢を見て、がむしゃらに、生きれなかった事への悔しさ...情けない。
頬からは、涙が一雫ポツリと、落ちた。
もし、来世があるなら、私は、私の思う様に、人生を好きに、生きてみたい。
私は誰からも看取られる事なく、享年三十四歳、白血病にて、一つの生涯を終えた。
ふと気がつくと、とある図書館の、床に横たわっていた。そこは、遥か彼方まで、本棚が、ずらりと並んでおり、そこに私以外、誰も居なかった。
私は近くにあった本を、一冊とり、目を通す。
題名は「勇者アレンの冒険譚」
実に勧善懲悪なだけの、ありきたりな小説だった。
興味を無くした私は、様々な本を選びながら、読んでいく。
「冒険者ファートナーの未知の探検」、
「シトラス皇女の愛のポエム」、「ピエール男爵の田舎暮らし」などなど、何を見ても、心に響かない。
そんな中、ある本を手にする。それは、題名がなく、注釈に、「誰でも書ける楽々、剣と魔法の異世界小説」とあった。
私はその本に何故か、期待感を感じた。
何故なら、誰でも書けるという事は、自分で好きに、小説を書けるという事だ。
私は、その本を手にとり、机に向かった。
ちょうどそこには、古びた万年筆が、置いてある。
では、私が小説というものを、書き始めるとしようか! 流行りの作品を書いてみる。
まず、題名は何が良いだろうか...
そうだ! 「まるで小説のような人生を歩みたくて〜うさぎとモフモフパラダイスをするので、自分を追放した祖国に呼ばれても、もう戻れない...」
私は、題名を書き終えると、その本は光を発した。
すると、本の中から、ウサギの容姿の仙人が、現れたのだった。
「題名を記した其方こそ、この本に選ばれし、主人公である。人生とは、筋書きのないドラマである。其方のドラマが、この本に記録され、小説となる。では健闘を祈る」
「いやいやいや! 物語を書こうとしただけで、主人公になる気はないよ! せめて追放の文字を消して〜」
しかし、ウサギ仙人は言いたい事だけ言うと、消えていった。
そして、私も本の中に、吸い込まれて、いったのであった...
流れ星が降る、星屑の世界! それは、宇宙を感じた。この中で、初期登録が、できる様だ。
「あの本め! 図ったなー! これでは自分の好きな人生送れないじゃねーか!
しかし、こうなれば、腹を括るしかない」
農民、平民、武将、貴族、皇族と選べるらしい。皇族は、後目争いが怖い。
まぁ前世は、随分、金に苦労したので、ここは無難に、貴族を選ぼう。
次は剣、弓、槍、魔法使いと今度は、得意な攻撃方法が、選べるらしい。
これは是非とも、魔法を使ってみたい。
現実世界では、無かったものだからな!
魔法使いにも、得意魔法が選べるらしい。
なんか、ゲームでもしている気分になる。
火魔法、水魔法、風魔法、土魔法...色々あるが、
こんなの基本的に、使えて当然だろ? あえて、選ぶまでもない。得意魔法は、今までにない、未知の魔法を探す。
しかし、どれも見た事がある、魔法ばかりだった。
ならば、作るしかない。私だけの魔法を!
そして作ったのが、ランダム魔法ーー何が起こるか、わからない魔法である。
人生とは、筋書きのないドラマである。
魔法でさえ、何が起こるかわからないのも又、酔狂ではないか。
何が起こっても、私は対処して見せる!!
よし、次は、目的だな!! これは物語を書く上で、非常に重要になってくる。項目は、魔王討伐、貴族の楽々隠遁生活、魔王の味方、天下統一などなど、色々ある...だけど私は、題名にやりたい事を、入れていた。
うさぎと過ごす、モフモフピラダイス!!
これしかないが、まぁいいや! 私は、前世の影響か、人間不審の、動物好きである。更には、金への執着心だけはあった。
私は、初期設定が終わると、透明になり、ある惑星に飛来する。
この時に初めて、私は精神体というものを、経験した。
導かれし先には、とある貴族の、出産したばかりの、赤子がいた。
すると、私の精神体は、その赤子に乗り移るかの如く、一体化したのだった。
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