第10話 食欲優先。
「あの、殿下?」
「なんだい、パトリシア嬢。ククク」
「宜しければですが…そちらへお座りに為りません事?」
そんなところで立ったまま、見下ろされても何とも気分が悪いし。
それにこんな所に、従兄弟達が来たら……またトラブルになるもの。
未だあの人達の屋敷は出来て無いので、一家揃ってあちこち城の中を彷徨いてるし。
特に、あの双子の弟の方に見られでもしたら何を言われるか…。
あの従弟は慇懃無礼なのですもの。
部屋や庭にも結界を張って、用心しないとならないなんて……全く厄介な従弟よね?
「そうか…でもここにか?」
「私の従魔をちゃんと触りたいなら、ここが良いかと思いましたのよ?ですが、無理にとは言いませんわ?なんでしたら、東屋にお入りに為ってくれても構いませんわよ?ですが、それだとルクス達とは遊べませんわね?フフフ」
別に側に座れとは言いませんし、執事の顔を伺えば渋い顔をしてるもの。
「それは……」
王子も戸惑ってるのね?まあ王子なんて身分だと地べたに座るなんてしないわよね?
…多分?でも座るくらいでこんなに躊躇するものかしら?
「それでしたら…此方へ椅子とテーブルをお出ししましょうか?お嬢様」
おや?ナイスフォローですわね?グレン!
「そうして頂けますか?私も手伝いをしますので。殿下そうしては如何ですか?」
「そう……だな、そうして貰うよ。パトリシア嬢すまないが…椅子に座るよ」
「構いませんわ、それでしたら私もそちらへ移動しますわね」
「あぁ、そうしてくれると助かるよ(地べた等座るものか!卑しい平民でもあるまいし!)」
取りあえずはルクス以外を抱いて肩に乗る二匹はそのままで。
後の三匹を抱き上げて、立ち上がると椅子が用意されるまではそのまま立っていたら肩に乗っていたルトが、肩から下りてルクスの背に乗り直した。
(ルト?どうしたのかしら?そわそわしてない?)
《なんでもないよ?でもその男の人…前にも見たけど…嫌なの!》
(そうなの?)
《嫌!だから影に入ってもいい?》
……別に構わないけど…?
(おやつ要らないの?)
《おやつ出るの?》
(多分でるわね…嫌なら、後で食べても良いわよ?)
《取っておいてくれるの?》
(ええ)
《なら、影に入るね?カイも入るって、じゃ後でね?主》
それだけ謂うとルトとカイは影に入ってしまった。
「おや?二匹が居なく為ったね、どうしたのだい?」
「いえ、眠いそうですわ。チビ達は気紛れですからお気に入り為さらず」
ルトはあんたが嫌だから影に隠れた、とは言えなわ。
王子には上手く誤魔化したけれど、他のチビ達もあんまり良い反応ではないわね。
これは…早々に引き上げた方が良さそうだわ。
「お嬢様お待たせ致しました。お茶のご準備が出来てございます」
「グレンありがとう。殿下もお座りに…」
既に座ってたわ……これって……?
「お嬢様、お出しするお茶のリクエストはございますか?」
「そうねぇ……」
あ……っ!そうだわ、前にお出ししたお茶で殿下のお気に入りを聞いてみましょう。
フフフ、殿下はお出ししたお茶覚えてるのかしら?
「殿下は、何か飲みたいものはありますか?」
「え?お茶かい?そうだなぁ……前にここで飲んだお茶は、出せるかい?」
「初めてお出ししたお茶……ですの?」
「あぁ、あれは美味しかったよ。ジャムをお茶に入れるなんて、初めて飲んだよ」
「あぁ、ブルーベリーのお茶でしたかしら」
「そう、それだよ。お願い出来るかな?」
「フフフ。ええ、直ぐにお持ち致しましょう。では、少しお待ちくださいませ」
「すまんな、グレン殿が入れるお茶は上手いからね」
なんだかわざとらしく、殿下はグレンを誉めてくれてるけれど…。
まあ良いわそれよりルクス達よ。
(ルクス)
『なぁに?ご主人』
(ルトが王子を嫌いだと言って、影には入ったけどルクスは?)
『僕は…別に?おやつ貰えるならここにいるよ?リズとかグラン、ホワイもお腹すいたってさ』
食欲優先なのね……。
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