第53話 不機嫌。

「あ、あの…失礼かと存じますが。殿下は、どの属性魔法がお得意ですの?」

「パトリシア様!殿下に失礼だ!」


 おっとそう来ましたか?

 教えてくれと言われたから、殿下の属性を聞きたかったんだけど…。

 風魔法、水魔法と光魔法の一つでも持ってればなんとか成るかな?と思って聞いただけなのよね。


「そ、それは失礼いたしました。でしたら殿下に魔法は、お教えすることは御座いませんわ。不敬でしたわね?」


 頭を下げて、殿下の執事に謝り。


「…………」


 

 執事は無言…なら殿下に向き直り声を掛ける。


「と、言うことですわジーク殿下。私は殿下に魔法はお教え出来かねますわ」

「っ!ロミノお前、出過ぎた真似をするなよ?折角……あぁ!もういいよ。パトリシア嬢すまないね。私の執事が失礼な事を言ったね」

「いえ。特には」


 私が冷めた返事をしたので、場の空気が固まって仕舞った。そこへグレンとメイド達が、昼食を持って東屋に戻って来た。

そして、グレンがその場の雰囲気がおかしいと感じたのか…私に話し掛けてくる。


「お待たせ致しました。昼をお持ちいたしました…が?パトリシアお嬢様……如何致しましたか?」

「い、いえ何でもないですわ。グレンありがとう。さぁ、ジーク殿下どうぞお食べになって下さい。そういえば……お毒味が未だでしたか?どうしましょう!」

「せ、僭越ながら……私が致しますのでお構い無く」

「そうでしたか、それならどうぞ。私達は失礼ですが、勝手に食事を始めますので。それと、席を外させて頂きますわ」

「あ、あぁ。どうぞ先に始めててくれ。(ロミノ……お前後で説教だからな!)」

「…………」


 席を立ち東屋から出る。


「パトリシア嬢、何処に?」

「いえ、何処にもいきませんわよ?ルクス達と外に居ますわね?」

「え?え?ああぁ、ま、まっ……」


 殿下の言葉を振り振り切って外に出て、芝生の上にシートを敷くと、ルト達のご飯が乗る皿をグレンから奪い取る。そして、ルト達に渡す。


「さあ、ルクスにルト皆ご飯よ。おいで」

》》》》


(フフフ。ルト、ルクス皆も美味しい?)

《うん!美味しい。もっと!》

《皆も美味しいってさ!》

(そうなの?ありがとう。あら、ルクスはもう食べ終わったの?おかわりかしら。ならはい、どうぞ。でもこれで終わりよ?)

《ええ、残念だなぁ》


 ルクスが返事をしたかと思ったら……、ガツガツと出したご飯を食べて秒で終わる。は、早いわねぇ~。


《ねぇ、主?》

(あら、ルトなに?)

《主は食べないの?彼処にご飯あるよ?》


 と、東屋のテーブルに乗るサンドウィッチに顔を向け聞いてくる。


(ん~なんだか、食欲が無くなったわ。面倒に成ってしまって)

《そうなの?でも勿体ないよ?》

(グレンに片付けるように頼むわ)

《そうなの?》

(ええ、私はここで飲み物でも飲んで皆が食べ終わるの待ってるわ)


 ルトにニッコリ笑って指でルトの頭を撫でる。


《フフフ。気持ち良い~もっと撫でて~》


 フフフ…モフモフが癒しよねぇ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る