第36話 呼び方

 二度目のどうして?を聞きました…非常に面倒です。それにこの着飾った格好これを見て人と会ってたのは分かる筈…。

 何か聞き出したいのかしらね?


「いえ、たいした事ではありませんわ。御客様と少し、お話をしていただけですから」

「そう……お客ですか」

「ええ、それより王子様は。どうして此方へ?」

「あぁ、少しアレク殿と話しがあってね。サロンに居たのだが、君がここに居たのが見えたのでね。どうしたのかと思ってね?」

「そう……でしたか。お兄様とですの?」


 何処まで見てたのかしら、お兄様……少しは配慮しましょうよ!


「それにしても、この東屋から見る中庭の景色は、見事ですね?庭師がこれを?」

「ええ、私も少し手伝いましたわ。フフフ」

「貴女がここを、手伝う……?」

「ええ貴族の娘がと、お思いでしょう?」

「ハハハ。少し驚きました」


 すると、グレンが声を掛けてくる。


「お嬢様、失礼致します。お茶をお持ち致しました」


 ワゴンでティセットを持ち込んで来ると、王子の前と私の前にティーカップとお菓子を置き後ろに下がる。


「グレンありがとう。さあ、王子様宜しければ召し上がって下さいませ。我が家自慢の、お茶とお菓子ですわ」


 出されたお茶は、先程とは違うフレーバティーですわね。良かったわ。

 先に私がティーカップに口を付けて、一口お茶を飲む。


「グレン……、これはブルーベリーね?美味しいわ」

「ありがとうございます」

「なら私も、頂こう………。これは旨いですね。果物の香りがする」


 私とグレンの会話を聞いて安心したのかしら?

 お茶に口を付ける…私を毒味役にしたわねこの方…。


「そうですのよ。ですが、このジャムをお入れになると、尚香りが立ちますわ」

「そうですか?なら、私も真似をして……。なんと……これは甘くて美味しいですね?パトリシア様。貴女の家が羨ましいですね?」

「……何が、でしょうか」

「我らの国に、この様な豊さは無いのでね。恥ずかしながら、これ程暮らしぶりが違うと嫉妬もしますよ」

「そうでしょうか?私は王都で13年暮らして居りましたが……不便はなかったですわ」


 まあ、家だけが他と違ったのかもしれませんが。

 そんなことは言わなくでも良いことですし。


「そうですか?ま、それ程ベルガモットの領地が、豊なのでしょうね」

「さぁ?私には、領地の政は分かりませんわね」

「フフフ。そうですね?」

「それで、私に何かお話しがありますの?」

「いえ、そう大したことは無いのですがね。遠目に見えた貴女が、少しお疲れの様でしたので。気晴らしにお話しでも?と思い、お声を掛けただけですよ?」

「まぁ、そうでしたの。ですが……共も連れずに?少し無用心なのでは」

「ハハハ。貴女が私に何かをするのですか?」

「フフフ。お戯れを、私にはなにも出来ませんわ」

「でしょ?なら安心ですよ……。あ!一つお願いが在るのですが宜しいですか?」

「なんですの?」

「この様な見事な庭を、是非案内してくれませんか?貴女が、手入れをしてる庭なのでしょう?」

「………今から、でしょうか?」

「ええ、出来れば」

「グレン?大丈夫かしら?」


 グレンに顔を向けて確認する。お願い、誰が付いてきてねの想いを込めて。


「………ええ、構いませんよ?護衛は付けますが」

「そう。……でしたら、参りましょうか?王子様」

「あ!それと」

「なんですの」

「その「王子様」は止めないかい?」

「はぁ、ですが……?」

「是非君には、ジークと、呼ばれたいね」

「そ、そのような……不敬な事は……」


 こ、困るのでやめて下さい。

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