第32話 嫌々ながらのお見合い。

 支度が終わり、父様の執務室執務室へグレンと共に向かいお父様に挨拶をする私ですが。

 …気分はどんより曇天模様です。

 うぅぅ……段々気分も悪くなります。


「……お待たせ致しましたわ、お父様……」

「あぁ、来たねパトリシア。なんだい、気が重いのかな。浮かない顔をしてるぞ」

「そうですわね……。全く、気は進みませんわね?」

「すまんね……?まぁ、あの伯爵の息子だ。話して見て気が進まぬなら断っても良い。向こうもそうしつこくは、してこないだろうからな」

「なんですの、それは。それで良いのなら会いたくはないですわ。本当に気が向かないです」

「ああ私も、あの伯爵は好かんよ。あれではなぁ~。悪意はなくとも、一緒になにかをしょうとは思えなくてね。それにしてもパトリシア、お前…何時もより着飾ってないかい?」


 何故か先日の王子の時より、ドレスに力が入ってないかいと言われました。ですが、私の所為ではなくてこれは……エルサですわ!


「エルサが何故だか、張り切ってしまい。こうなりました、私はお人形では無いのですけれどね」

「それは、そうなのだろうが……。エルサも着せがいがあるのでは?実際、パトリシア。綺麗だぞ」

「もう、お父様ったら、誉めてもなにも出ませんわよ。からかわないで下さいな」

「ハハハ。それでは行こうか、私も東屋までは一緒に行くよ。相手が来る前には抜けるがね」

「……はぁ。分かりましたわお父様……」

「だが、護衛が、ちゃんと見てるからね。危なく為ったら声をだせよ?」

「……承知しましたわ。お父様…ありがとうございます」


 そして、私達は中庭の東屋の中に入る。

 お茶の時間なので、ちょっとしたお菓子をメイド達がテーブルに用意します。


「パトリシア、それなら私は戻るよ」

「あら、ここには居てくれないのですか」

「あぁ、パトリシアそう気を張るな!」

「分かりましたわ。お父様……ありがとう」


 お父様が東屋から姿を消してから、しばらく待つと伯爵の息子のエンバル・インブルグ様がお見えになります。


「やあ、ごきげんよう。お待たせしましたね」

「ごきげんよう、エンバル・インブルグ様。そう待ってはいませんわ。さぁ、こちらへお座りになりませんか」


 と、対面の席に進める。


「それでは………失礼」


 インブルグ様を席にと進めると、グレンが素早くお茶を出す。


「おや、これは……良い匂いですね?お茶なのですか」

「ええ、バラの花びらが入って居りますの。お好みでバラのジャムも、入れても美味しいのですわ。是非お飲みになって下さいませ」


 ニコリと笑い掛けた。


「珍しいですね……。では、失礼して……、これは美味しいですねぇ」

「フフフ。そうですか、お口に合いまして?」

「ええ、此方のジャムも入れるのでしたか……。こ、これもまた!香りが良い。バラもこんな風にすると、食用になるのですね?勉強になります」

「まぁ、熱心ですわね」

「ええ、我が領地は魔物の被害は少ないですが。天候不順で、干ばつと迄は行かないですが、少々作物に被害が出ているのでね」

「まぁ、そうでしたのね。それは……、大変ですわね。そんな時に領地を離れてしまって、領地がご心配なのでは?」

「それなら大丈夫ですよ。私の上には兄が居りますからね、領地は兄が継ぎますからね」


 そうですのね……でも。心配は、心配ですわよね。

 資料にはあったけど……本当に何で私なのですかしらね。

 伯爵家の次男坊で、婚約者破棄してこの領地へねぇ………。


 馬鹿なのかしら…………。

 それとも何もか企んでるのかしらね?

 はぁ~そんな人の為に、私の大事な時間を使いたくないのだけれど…。

 これはとっとと顔合わせを終わらせるに限るわね。

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