第30話 楽し雰囲気で…。

「お、お父様!今それを言わないで下さいませ!折角……」


 雰囲気ぶち壊しですわね?お父様!


「す、済まないね。だが、これを飲んでしまったら、明日の話しを忘れてしまって。部屋に戻りそうだったのでな?」


 ワインの瓶を持ってふらふらと揺らしながら、すまないと言うのですが……。


「お父様、今日は私の気晴らしの為に……」


 ……台無しですわ。

 よし!後で絶対に、仕返しするわ!フフフ。


「で?お父様なんですか、その話しは?」


 座り直して、食事をしながら詳しく話しを聞く事に……。


「……………で」

「……お相手は、あの方ですの」


 先日のパーティーでお会いした、……父親が少し無礼だった人のご子息かしら。


「ああ、そうだ」

「……そうですか。で?」 

「で?」

「………あの、嫌味を言ってきた保護者は同席ですの。お会いするのは私と息子様だけてすか?」

「ああ、その「で?」か。いや、お前と彼方の息子一人だけだ……」

「そ、それは………」


 マジですか、この人見知りの私を知らない殿方の前にポィっとするのぉ~。


「ま、護衛にはグレンも付けさせるぞ」

「それはそれで、なんとも恥ずかしのですが」

「お嬢様、……お呼びで?」

「よ、呼んでないわよ!グレン」

「いや、ここに居ろグレン。明日の、パトリシアの警備は慎重にな?相手の執事も同席するぞ!」


 すると、グレンがなんの事かとヴァンスお父様に理由を訪ねる。

 おや、グレンがなにも話しを聞いてないの?


「も、申し訳ございません。私にはなんの事やら、お話しをちゃんとご説明して頂けますと、有難いのですが……」

「ああ、そうだったな。すまない。それでは、グレン。明日の15時に城の中庭の東屋で、エンダル伯爵のご子息と、パトリシアの見合いの席を儲けた。その警護を、お前に任せると言う話しだよ」

「そ、そうでございましたか。でしたら、しっかり警護致しますのでお任せを」

「ああ、任せた。後はその場の人払いを頼む」

「承知致しました」


 話しが私抜きで進んでる……。


 困ったわ……婚約者候補が二人も現れるなんて。


 一人でも対処に困るのに、この恋愛偏差値がマイナスな私に、どうしろと言うのかしら?


「そう言えば、お父様達に質問ですわ!」

「な、なんだ?急に」

「お父様……私、お相手の情報を、なにも知りません。それもお二方とも、聞かされて居りませんわ!」

「お、そうだったか?」

「そうだったか?……では、ないですわよ!あの、王子様の情報も知らされてないですわ」

「なんだ?シア……あの場で王子の、鑑定したのではなかったのか?」

「………そんな失礼なことは、しませんわよ?いくら私でも!お兄様……私は慇懃無礼な者には容赦はしませんわ。ですが、ちゃんと礼を持って接して頂ける方には、礼を持って接しますのよ?お父様もそれは知ってますわよね?」


 全く私をなんだと思ってるのかしら?


 ……………多分だけれど……。


 取りあえず、私達を騙すつもりで平気な顔をして私に遭いに来たのだから、今は騙されてあげるけれどね?



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