第40話 専属執事三人の失敗。

 領地に入る為の門には結界石が埋め込まれ、ある程度の悪意や犯罪歴の有る人物は、身分証が有ろうと、金があろうと門を通る事が出来ないはずである。

 結界は薄いガラスの様に張って有るのだが。

 それを長年継続させるには、年に一度魔石に魔力を溜める作業があるのだが、これを怠ると魔力の枯渇で、誰でも簡単には領内に入る事が出来てしまう。

 門には兵士が門番として領地を守っている。

 門番達は、身分証を確認する役目はあるが、門を通れた者だけに、身分証の提示を求めてるのだが……。

 ここが甘いと今回の様になるのかしら?

 悪意と犯歴が分かる水晶も有る筈なのだけど。


「ああ、お前が幼い頃に結界を張っただけだからなぁ~?石の寿命なのかも知れない。魔力の供給等は、してないだろうな。……何せあの父親のする事だ!魔力が弱って居ても、何も気にしないかも知れんしね」

「魔石の劣化ですの?ですが……この城の結界は先日張りましたが……少し弱かったのが原因ですわね。お父様申し訳ありません」

「いや、構わぬよ?誰も家族から、あのような、輩を送って来るとは思わんよ?」

「それなら、魔石全部を新しくしましょうか?ですがそろそろ在庫が乏しいのでは?」

「まぁ、そうだね。(良く見てるね?全く)」

「でしたら……私が行きますか?」

「そうだなぁ……アレクと影の10人で行くか?」

「10人………多いですわ。精々5人で」

「いや!馬番も、もしもの時の報告をする者も、含めてだ!王都の時のように……なっても困る!ヴァンスから聞いてるぞ?」

「え?あぁ……そうですか?それならそれで良いですが……」

「ヴァンスお兄様は、お連れしなくても?」


 お兄様………拗ねますわよ?


「何を言ってる!私だって我慢するんだ!ヴァンスにも我慢してもらう!ハハハ」


 何を言ってるのかしらお父様は?


「失礼します。旦那様、お呼びですか?」


 扉の向こう側からクレオの声がした。


「入れ!」

「失礼します。旦那様お呼びでしょうか?」

「ああ、少し確認したくてな?クレオ、アイザック、マルス?」

「「「なんでしょうか」」」

「クレオ……お前私に黙ってる事はないか?」

「えぇ……御座いませんが……」


 無いと良いながらお父様から目を背ける。

 珍しいわね?


「ですが…、一つだけ……。もう少し様子を見てから、御報告をと思ってましたが……」

「お前……少し気が緩んではないか?」

「………」

「お前は使用人達の、統括だろ?」

「そうで、御座います」

「アイザックは?アレクに相談したのか?マルスは?」

「私はアレク様がまた、パトリシア様に固執してしまうと心配の余り、黙って居るのが得策と考え伝えては……」

「ああ、アレクだからな……あれもパトリシアの事と成ると……目くじらをたてるからな!まぁ仕方ないのか。マルスは?」

「私もヴァンス様の、帝王学の妨げに成るかと思いまして……」

「お前は……ヴァンスは、次期国王だ!何も知らぬ訳には行かぬだろ!」

「も、申し訳………」


 ありませんと言って深々と頭を下げる。


「マルス………お前は。全くお前達!グレンが何も言わなければ、見逃してたではないか!」

「「「も、申し訳ありません」」」

「一番被害を被ってるのは、パトリシアだぞ!」

「「「!」」」

「申し訳ございません。パトリシアお嬢様」

「………まぁ、皆様は、お忙しいのでしょうし?大丈夫ですわよ?それに殿下の事は、私の所為でしょうから?」

「「「ま、誠に申し訳ございません!」」」


 フン!私に全部押し付けておけば、良いとでも思ってたのがまる分かりよ!


 

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