第35話 覚悟の確認 5

 ああ、この話しはしたくない。


「私は…………(本当に話したくないわ~)リシュタール国の、第三王子の婚約者でした」


 あ!言っちゃった……あ~嫌だ!


「え?婚約者?なら何でここに?」

「でした!と申しましたわよ?私は」

「でした?……………あ!破棄したのか?」

「いえ?されたのですわよ?」フン!

「さ、された?貴方のような聡明な方が?破棄された?」


 何度も言わないでください!気分が悪くなるわ!


「ええ、お相手に真実の愛と言う方が現れた様ですわよ?フフフ」

「パ、パトリシア!オーラが変わってる……怖いよ!殺気出てる」

「え?あ、申し訳ありません。で、ですから私は世間的には傷物ですわよ?」


 自分で言うと実感が沸いて来るわね?

 あ!なんか………ムカついてきたわ…………。


「だから?」

「え?だから破棄されて傷物で……普通は」

「………だが、余り悲しくは無さそうだが?逆に変な感情が漏れてないかい?」


 何でこう……この人は周りの事は鈍感なのに……変なところで聡いのかしら?変な方ね?


「ええっと……そう……ですわね?王子とは形だけの婚約でしたから?私は王城で王子妃の教育は受けてましたが……お相手は遊んでましたし……それに王妃の言いつけで。パーティやお茶会などの出席は、禁止されてましたし。お相手には、全く好意は有りませんでしたから」

「は?何だいそれは?」

「さぁ?何ででしょうね?……ですから、それを踏まえた上で私との事は考えた………」

「パトリシア!」


 え!え?いつ隣に来たのえ?何で貴方が私を抱きしめるのかしら?


「え……………えっと………殿下?離して下さい」

「駄目だ!」

「離して……」

「だって君、泣いてる」

「なっ!泣いてないですわよ?変な事は言わないで………ください」

「嫌だ!パトリシア……もう気を張らなくても良いよ?」

「は?なにを勝手な………」


 突然現れて好き勝手して、なにをしてるのよ?この人は!強引にも程がある!穀潰しの癖に!


「パトリシア!決めた!」

「は、離して下さい!痛い!」

「お!すまん!」


 抱きしめられた腕が離される。

 ほっ!免疫ないからやめて欲しい……というか!

 初めてね?お兄様達以外の男性に抱きしめられたのは?あ、子供が居たか……あれはノーカンですわよね?

 それにしても、前世でもなかったわね…………これが初……あぁ、私の人生ってなんなのかしら……落ち込むわぁ~。


「殿下!叩かれないからと言って安心しないで下さいませね?」

「す、すまん。つい」

「つい……。はぁ~もう話しは終わりましたわね?でしたら、お部屋にお戻りになっては如何ですの?」

「え?あ、未だ話しは終わって無いだろ?」

「終わりましたわよ?あとは、殿下の覚悟次第でしすし?あ!私の傷も考えた方が良いですね?あの方、執事に反対されますわよ?絶対に!フフフ」

「き、君は……性格が悪い」

「そう?でしたら諦めた方が宜しいですわよ?私は変わりませんもの?」


 そう、諦めて帰って下さいな?覚悟が半端な?人に居られても困ります。

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