第21話 協力を、敵ではない

「は?誘拐と保護責任放棄ですか?」

「ああ……そのショックなのか?パトリシアは、全くここで暮らした事を覚えてないと言う。まぁ、当時パトリシアは3才だったしな。記憶がないのは仕方ないがね?」


 それだけ答えると、兄アデスは黙ってしまう。


「はぁ……我が親はなんて事を……。では、私の子供達も……?あの両親に何かされる可能性が、無かった訳では無いのですね?」

「いや?多分パトリシアだけを嫌悪してると思う」

「それは………何とも……。ですが、私に娘が出来てたら同じ目に、遇うのですかね兄上?」

「ん?それは分からんな、案外可愛がってくれたかも知れんぞ?……辛く当たるのは、パトリシアだけかも知れんしね?」

「でしたら何故、この領地に帰って来たのですか!」


 その言葉を出した途端に、兄アデスが眉間に皺を寄せて機嫌が悪くなる。

 おや?迂闊だったか?


「知らないのか?パトリシアが婚約破棄をされたのを?」

「それは、先日伺いましたから……存じてますが……」

「なら聞くが?王都でパトリシアが笑い者にされるのを、見てろと言うのか?バカ王子に13年も時間を無駄にされた。他者から愚か者と、娘が笑われるのを我慢しろと?お前は言うのか?」


「そ、そんな事は思って居りませんよ?私はただ……」

「唯?なんだハンス?ここ暫くパトリシアをずっと見ていたろ?お前は」


 私達の敵に回ると言うのなら!あのパトリシアが造った屋敷を全て跡形もなく、ぶっ壊して追い出してやるがな!


「………。(しまった!兄上の地雷を踏んだか?これは……?)」

「パトリシアに屋敷を造って貰っても、何の礼もしないで、パトリシアを見張り?何かに利用でもする気かね?パトリシアの力を見て、手放せないと?何様だお前は?!それに、この領地は屋敷は、私の物でもあるのだがね?ハンス」


 帰ってきて何が悪いのだ!!


「そ、そうでしたね……、兄上。礼を忘れてましたね……。ですが、私は何も考えて……いえ、パトリシアを利用する事はなど、考えてませんよ?唯…父上達の以上な程の、兄上達嫌……パトリシアにする嫌がらせの訳を、知りたかっただけですから。そこは信じて頂きたい。私だってあの親からは、散々嫌みを言われて我慢してあの屋敷で暮らしてましたからね?」

「独立すれば良かったのに……?」

「独立してどうしろと?」


 独身の時はまだ良かったが……。

 所帯を持って仕舞ったから、出るに出れなくなった。


「どうせ、所帯を持ったから。家を出れなかっただけだろ?お前は……」

「ハハ、良くお分かりで……。流石、兄上ですね」

「まぁ、こうなる事は想定していたからな?」

「想定ですか?」

「あぁ。父上達の以上な迄の、パトリシアに対する嫌悪は、なんとなくだが想定していたよ。妻や息子達とも、話し合っていたしな?流石にこの遊ばせていた土地を、ここまでにするという力が有るとは、思っても見なかったがね?」

「まぁ、お見事ですよ?私も屋敷の者からこの土地に、城が出来たと聞いた時には耳を疑いました。兄上と、お話が出来て良かったと思ってますよ?」


 これは本音だ、兄が逃げ場を造ってくれたのだから……。

 しかもこんな良い環境をだ!


「それは誠か?信じて良いな?裏切りは許さんよ?」

「あ、兄上。怖いですよ?顔!顔!眉間に皺をそう寄せないで下さい。私は最初に言いましたよ?協力するとね。けして敵ではありませんよ?」


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