第74話 領地へ・・・足留め

 暫くクレマンド殿下と、楽しく何でもない話をしていると、アレクお兄様様がチビッ子達を連れて私の所にやってくる。


「シア!お前……料理長と話をしてたのではないのかい?」(怒)


「えぇ、先程まで話をしてましたわよ?」


 な、何かしら?お兄様の目が笑ってないですわ、怖い!


「なら、何故こんなところで座って、悠長に殿下と話しなどしているのだ?(馬車に戻ってこいよ!)」


 顳顬に血管が浮き出てますわよ!お兄様。そんなに怒ったら、切れちゃいますわよ?

 すると対面に座る殿下が、呑気にアレクお兄様に声を掛ける。


「アレク殿、おはよう?どうしたのだい。何故そんなには慌てて来て、パトリシア嬢を怒るのだい。こんなにかわいい妹君を怒ったりしたら、嫌われて仕舞いますよ?(言ってやった!)」


 クスリと笑って、爆弾投下をしたクレマンド!


「ああ、すみません。ご挨拶が遅れまして。殿下おはようございます?で?なぜシアと一緒に?かわいいのは、知ってますが何か?」

「それは良かったよ。だが、私がここに居るのは可笑しい事かい?水を貰いにここ迄来たら、偶然パトリシア嬢と会ったのでね。座って話をしていた、だけだが?」もう一度クスリと笑う。

「くっ!そ、そうでしたか。殿下でしたら私もここにお邪魔しても?」

「え、えぇ。どうぞ?ご一緒しましょう。(くそ!シスコンめ!邪魔だよ!)それにしても今朝は天気が悪いですね?」

「えぇ、足留めが長引かないと良いのですがね?(呑気にシアの側に寄るなよ)」

「なら、川の様子を見てこないと行けませんね?なんなら私の側近も働かせましょう」

「それは、有難いですね?では後程、父に伝えますよ?」

「決まったら教えてください。(早く席を外せよ?)」


 な、なんだがバチバチしてますわ。電気が弾ける音が聞こえてくるのは……、気のせいでしょうか?

 それにしても、かわいいって何かな?


(ルト、ルクス。お腹すいたわね?)


 チビ達にそう言って、アレクとレマンドのバトルを見てると、料理長とグレンが私の座る席に近付いてくる。


(あら?お食事かしらね?それにしても珍しい組み合わせね?)


 料理長がワゴンを押してくるのが見えた。


「お嬢様。え!アレク様も此方にいらしたのですか?」

「あぁ、料理長か。そうだが、どうしたのだ?」

「い、いえ。お食事のご用意が出来ましたので、グレンと一緒に、王子様とお嬢様のお食事をお持ちしたのですが………。申し訳ありません。直ぐにアレク様の分をお持ち致します」

「あぁ!それなら、アイザックにでもたせろ!そこらに居るだろ?」

「畏まりました。では、先にクレマンド殿下とお嬢様の分だけお出ししますが………宜しいですか?」

「良いも何も、私の分がないのだから、置くと良いぞ?」

「では、失礼して」


 そう言って、グレンがテキパキと殿下と私の前に食事を出していく。


「あ!ルト、達の食事も用意してね?」


 でも、私………お父様達の所に行って、お食事したかったなぁ………。

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