閑話 馬車の中で 1

 少しだけ時を遡る。


 食事が終わり、これから旅を一緒にするためにベルガモット家の、馬車を借りることに成ったクレマンド達は。アレクとパトリシア二人に案内をされて、借りる馬車に乗り込む。

 そして、クレマンド達は馬車の内装に驚き、更に出発してからの、馬車の乗り心地にも感動をしていた。


「で、殿下。この馬車凄いですよ?殆んど揺れがないです!」

「騒ぐなよ?私もそう思って居る所だ」

「それにこの、馬車の中の広さ……」


 外見は普通の馬車なのに中に入れば、別の空間に居るような感覚だ。


「凄いですよね?トイレまで有りますよ?不思議ですよね?」


 全く、その通りなのである。

 しかも、棚に入っている軽食も見慣れない物ばかりで……少し引く。


「この馬車は、特注何だろうな?買えばいくら掛かるのか……」

「値段など、いらやしいな?トリマン」

「え?ハハハ!すみません、殿下。でも、それだけ財力があるのですね?やはり大国の貴族は、収入も違うのですかね?」

「まぁ、そうなのだろう?先ず、我々との国の大きさが違うからな……」


 嫌、でも可笑しくないか?

 視察で、この国の貴族の領地を点々として見てきたが何処も、私の国と変わらない技術と文化だったが……?

 単に、このベルガモット家の技術が進んで居るだけなのか?

 それだけ財力があるのか……?


「そう言えば視察では、ベルガモット領を見てきませんでしたね?」

「あぁ、あそこは警備が厳しくて、招待状が無いと領地にも入れ無いと聞きまして。視察が出来なかったのですよ」


 伝がないと、トリマンがぼやく。


「ほぅ?」


 どれだけ警備が厳しいのやら?


「領に入れるのは、商人、平民、冒険者達は、身分証があれば、すんなり入れるそうですよ。だが貴族は別だそうで、ベルガモット家の招待状がないと入れないと。可笑しな警備態勢です。全く変わってますよ!」


「だが……その不思議な領地に私達は、何の伝手もなく入れるのだ……これは好機だな?」

「そうですね?簡単な視察も出来ますよ!」

「いや?そうではないぞ?考えても見ろトリマン。私は義理の弟に命を狙われたのだぞ?多分第三者王子の、派閥の仕業だろうが。本音を言うと私はあの国に、何の愛着も無いのだよ」


 次期国王の座なんて、要らないよ私は。

 派閥も面倒だ、あれなんとか解散してくれないかね?上っ面だけ良くて、すり寄って来るから気分が悪いし。


「で、殿下それは……」

「私は幸運な事に、正室の第二王子だが。それだけで何もない。国はやがて、兄上が納めるだろう。だが、私と兄はあまり仲が良いとは言えぬ。私は兄を手助けをしてやろうとは、思っていないのが本音だよ」


 だからこそ、このベルガモット家の三兄弟妹が羨ましいのだが……。

 だがこれは、私事の話しだ……。


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