第50話 愚か者の最後 3

アレクの魔法が、馬車に向かい放たれると、バーンと言う大きな音と共に、馬車が弾ける様にバラバラになる。


「す、凄い。馬車がバラバラになった……」

「いや~これは、妹君も凄かったが……。アレク殿も規格外のようだね?」


とアレクの後ろで見ていた、クレマンドとトリマンが感心して話す。


「終わりましたよ?では、戻りますよ」

「ちょと、待って欲しい。アレク殿。トリマン、バルカン。あいつを動けないようにして、繋いでこい」


「……ああ!承知」


 と言って、トリマンガどうするのが分かったようで壊れた馬車に近づき、ケレスを引っ張る。


「な、なにをする」


 馬車の爆風に巻き込まれて、あちこち血だらけで横たわるケレスを、馬車の残骸から鉄の棒を探し棒と枷の鎖を通して、力で曲げて地面に食い込ませた。


 その食い込ませた鉄の棒の上に、大きな石で、更に食い込むように叩き、棒が抜けないようにした。そして、動かせないように石を乗せ固定した。


すると、寝転がったままのケレスが叫ぶ。


「で、クレマンド殿下、助けて下さい。私は、弟君に頼まれただけです。置いていかないで下さい。このままだと、私は……助けて!殿下!クレマンド様助けてぇ~」


 叫ぶケレスの側に寄り、クレマンドが小声で囁く。


「何を言ってるのだ?私がお前を助ける?何故だ?私を殺そうとしたお前を、私が助ける理由はないな!それに……待ってるが良い。直ぐにとは行かないだろうが。そのうち、お前に命を下した者も送ってやるからな。安心して行くが良いぞ、地獄にな?ケレス。お前の家族諸ともな。どうだ?嬉しかろう?」


 ケレスにだけニコリと笑って、悪魔の囁きをするクレマンドである。


「ヒィ!あ、悪魔!」

「フン!誰が悪魔だ!お前の方が悪魔だよ!碌でなしの無能めが」


 そう言い捨ててその場を離れ、アレクに野営地に戻ろうと告げた。




「あ!鍵……まぁ、もう良いか」


 アレクがそう呟き、ポィッと草原に向かって投げ捨てた。


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