第51話 愚か者に相応しい最後
置いていかれたケレスは、両手首に枷を嵌められ地面に這いつくばる形で繋がれている。
そのために身体を起きる事が出来ない。
鎖も短いので全く自由が無いままに腹這いになる。先程の爆風で負った傷も痛む。
「くそ!くそくそくそくそくそくそー!」
何でこうなった?魔物寄せの粉を行きではなく帰りにと、指示を受けていたので隙を見て馬車の後ろに目立たぬ様に取り付けた。
そして、守備良く魔物が襲って来てクレマンドと距離が取れその隙に、私だけ逃げるつもりでいたのに。
計画が全て崩れ去った。
あの邪魔者のせいだ!
「畜生!あの女。タイミング良く現れやがって!くそ!」
と言って腕を乱暴に動かして、ガチャガチャと音を立てて。埋まっている鉄の棒を引き抜こうとするが。重りの石が邪魔をしていてびくともしない。
下半身は動かず事が出きるので、土下座状態で座る事は出きる。(笑)
なんとか、立つ事も出きるが頭を下げたままなので頭に血が下がり、長く立っていられない。
しばらく暴れて疲れたのか、また腹這いになる。
くそ!
まともに食事も取ってないので力が入らない。
壊れた馬車の近くに、繋がれて居るので残骸の物陰には隠れられるが。……それだけだ。
「ここで魔物に襲われたら……ああ、あのくそ!王子(第三王子)の、言う事なんか聞かなければ良かった……」
元々視察に出向くクレマンド一行に、紛れ込み隙を狙い。殺せば借金の返済を肩代わりしてくれると、言われて受けただけだった。
「腹へったなぁ~。夕べの食事は見た事がなかったが、実に旨そうだった……」
馬車の残骸を眺めなから、ぼんやりと考えていると、残骸の上に見慣れた小さな小袋が乗っていた。
「何だ?見たことが……。あ、あれは。私が持ち込んだ……」
嫌だ、やだ何であれがここに有るんだ!
動けずに繋がれて居るから、何も出来ない。
「死にたくない、死にたくない、死にたくない!助けてくれ、誰でも良いから助けろー」
だが、この場所まで走らされ繋がれた直後に騒いで、そのまま疲れて眠ってしまい。
気がつけば、夜に差し掛かる時間になっていた。
当たりは夕闇に包まれていた。
すると、どこからか音がする。
「グルルル、グルル!」
「な、何だどこからか音が」
腹這いのまま頭だけを上げて、見える範囲を探ると何かに囲まれていた。
「や、嫌だ、あっちに行け!くるな!」
迫る何かは、魔物だった。
それは、腹を透かせ涎を垂らしたレッドウルフだ。魔物寄せの粉に引き寄せられてここまで来たのだろう。しかもケレスはあちこち傷を負って居るので僅かに血の匂いもしたのだろう。
足をバタつかせて、誇りを舞い上げ暴れるがそれだけだ。なので迫って来るウルフに抵抗が出来ない。
「くるな!あっちに行け!」
と叫ぶ声が引き金になり、ウルフがケレス目掛けて一斉に飛び掛かった。
「ワウ!グワウ」
暴れても繋がれて居るので、なんの抵抗も出来ずに、身体のあちこちを噛みつかれるそして………。
「い!ギャーーーーーーーーーー」
それが、最後のケレスの叫びだった。
そして、跡形もなくケレスの姿が無くなった。
後に残ったのは、枷だけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます