第39話 領地へ 枷?

 まって!すっごっく嫌な予感がします。

 ヴァンスお兄様とアレクお兄様も、予感がするらしく嫌な顔をしてますが……お願いです。私と目を合わすのやめて下さいませ。


「ヴァルガンド殿下。お願いとは?我々にも限度がありますが、出来る事ならお力添えを致しますよ?」


 父親様がそう言った。

 これは仕方がない選択ですわよね?ここで、この4人を放り出す訳には行かないもの。


「そうして頂ければ、此方も有難い」


 と言って、クレマンド殿下が頭を下げる。

 続いて側近のトリマンが願い出てきた。


「でしたら、お願いしたいのですが。まず一つは、先程馬車を預かって貰って居りますが。あれをここよりまだ後ろに、置きたいのですが宜しいでしょうか?」


 私とアレクお兄様以外がきょとんとする。

 そして父が口を開く何故かと。


「え?後ろにですか、それは何故か?」

「ここより後ろが、我々が帰るルートです。そこに置いて欲しいのです」

「それはかまいませんよ?だが修理は?」


 するとクレマンド殿下が会話に入る。


「それは要らないよ。そこまでして貰う義理も無い。それに、あれは捨て置くので大丈夫ですよ」

「………わかりました。成らば明日の早朝にでもアレクと家の者で、置いていきましょう?」

「いや、それは申し訳ないので。アレク殿のお力をお借りするのと、私の側近が行いますので。それまで待ってて欲しいのだが」

「わかりました。その様に致しましょう」


 この世界、馬車を捨てたぐらいでは何ともない。

 でも魔物の住みかに成らない様に、バラバラに壊して置かないといけないのよね?


「宜しくお願いするよ。そしてもう一つは、鎖付きの枷はないですか?」

「枷?」

「ええ、あいつ!私の命を狙ったのでね?」


 外に縛って転がしてある、あいつだよというクレマンド殿下に全員が納得する。


「その前に、殿下。今夜はあの者どうしますか?」


 ヴァンスがクレマンド殿下に問う。


「ああ、あれか……?仕方がないので私と同じテントに縛って、転がしておくよ」

「そうですか?では、枷の鎖の長さは?」

「そんなに長くなくても、良いのですが?」

「成らば、朝までに用意致しますわ?」

「そうか?それなら願いするよ。宜しく、パトリシア嬢」

「わかりましたわ。それだけで宜しくて?」

「いや、最後にもう一つ有るのだが………」


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