第34話 領地へ ケレスという側近……
そう言って立ち上ると小さな袋を摘まんで、ケレスの目の前にぶら下げて見せる。
「しらんな、何だそれは」
「あら?そうですの?知らないのですか……」
それだけ言って袋を持ったまま椅子に座り直す。
「はあ、お前も見たはずだが?馬車から出てきたのを、知らんとは言わせない!」
「で、殿下まで。おい、女!殿下に何をしたか!」
何かするもなにも、何をすれば良いのかしら?
「全く、失礼な方ですわね!クレマンド殿下お伺いしても?」
「なんだい?パトリシア嬢」
「この方の爵位は?」
するとまた、ケレスに会話を止められる。
「女!殿下に失礼だと言ってるのが分からんのか!」
「何か、煩い虫が居るようだね?気にしないでくれ。こいつは確か、伯爵家の末弟だったか?」
気にしないで良いなら無視をしますわよ?
「そうでしたか。他国とはいえ全く伯爵ごときが、偉そうに仰いますわね?」
「な、何だと!」
「あら?羽虫が鳴いてますわね?」
「キサマ!!む、虫だと、私に対して無礼な!」
「貴方、先程から私達を下位の貴族だと思って、居りませんか?」
「それがどうした?下位の貴族ごときが、お前達など所詮子爵位もしくは、男爵位だろ!フン」
とニヤリ笑うけれど……何を笑っているのかしら?
「あの殿下、大変失礼かと存じますが。殿下のお国ではあの様な方でも、王子付の側近になれますの?」
ご免なさい、本当に怒らないで下さいませね?
「い、いや、そんなことはないのだがな。親類からどうしてもと言われて預かり、側近にしたのだが。まさかこれ程とは思って居なかったのだよ。元はあの三人だけだったのだがな」
全く頼まれても預かるのではなかったよ、と後悔の念を隠す事なく溢す。クレマンド殿下である。
「そうでしたか、これは大変失礼致しました。では、クレマンド殿下。殿下は、私達の家名は御存じでしたか?」
「あぁ、もちろんだよ、ベルガモット公爵家の方達だろ?君のお父上は国王陛下の片腕、やり手の宰相閣下だ、違うかい?」
「えぇ、正解ですわ。流石ですクレマンド殿下。それですのに……あれは……」
と失礼男ケレスをチラリと見る。
「……私に聞かんでくれ、パトリシア嬢」
と顳顬に人差し指を押しあてる。
すると、今まで静観していたのか?食事に夢中で口を挟まなかったのかが、分からないが。ヴァンスお兄様がクレマンド殿下に詫びる。
「パトリシア、殿下に失礼だぞ。妹が失礼を言いまして、申し訳ありません」
あ!そうでしたわね?でも、ムカついたのは事実だけれど……。
「クレマンド殿下、申し訳ございません。他国の事に出過ぎた事を……」
「いや、気にしないで欲しい。パトリシア嬢の言ってる事は、理解が出来る。私でもあれ程侮辱をされれば、良い気はしないからね。トリマンこちらに来てくれ」
と言って側近1号を呼ぶ。
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