第26話 領地へ 残った兄達。

そして、こちらはパトリシアを見送ったヴァンスとアレクである。


「それで、クレマンド殿下。馬車はどうされるか?決まったのでしょうか?」

「あぁ、ヴァンス殿。私は捨て置くと言っているのだが………」


 クレマンドが、ケレスを睨み付けるのを見てトリマンがケレスに馬車は諦めろと言う。


「ケレス!馬車は捨て置けよ!」

「し、しかし。トリマン様、この馬車を捨て置くとなると……」

「と、あんな感じなのだよ。私の側近は決断の一つも出来ん癖に、口は出すのだよ全く……(使えない)」


 すると、側近の一人が冷たく見放す事を言う。


「ならば、ケレス。馬車は、お前がここで見張っていれば良いのでは?俺らは休みたいのだ」


 その意見に同調する側近達。


「な!」

「そうだな、クレマンド殿下が捨て置けと。仰られているのに、その命を聞けぬ。と、言うので在ればお前がここで見張ってろよ?ハハハ」


「し、しかしこの馬車は国の………(くそ!計画が……)」


 おお、塩対応………だが俺もそれには賛成だ!

 あの側近は、【世の中臨機応変に行動しないと、自分の身が危ない時もある】と、言う事を知らないのだろうか?

 しかも、ここは何もない草原だ!見通しも良いし隠れる場所すらないのに………。

 アレクは、ぼんやりと会話を聞きがなら考える。『俺だったら、あんな側近を側に置くなんて気が知れん』と、アレクは思う。


 それに、あいつ絶対何か企んでいる筈だ。でなければ壊れた馬車など使い道のない、だだの粗大ゴミなのだから。


 一方ヴァンスも、ぼんやりとクレマンド達のやり取りを見ながら考える。いつ、魔物が襲って来るやも知れないのに壊れた馬車に固執すれば、命取りにもなる。

 それすら分からない騎士など、見習い騎士にも満たない。『俺なら……あの側近は要らないな!」と。


「はぁ~」


 アレクが呆れたため息を漏らす。

 そのため息を聞いた、ヴァンスがアレクを叱咤する。


「こらっ、アレク。殿下に失礼だろ?」


 なんとも間の抜けた叱り方をする。


「ですが……兄上。我々もいつまでも、こんな融通の利かない側近に時間を取られるのも……」

「言い過ぎだ、アレク。すまんなクレマンド殿下、些か口が悪すぎたな?」

「いや!アレク殿の言う通りなので、耳が痛いよ。ハハハ!」


 自分の判断を融通が利かない、と言われたケレスは怒りを露にする。


「貴様!たかが下位の貴族の分際で、私を愚弄しおって!!」


 と剣に手を掛けた。

 その様子をアレクは冷めた目で見る。

 下位の貴族……ねぇ?下位では無いがまぁ、今は貴族でもないのか?だったらそれでいいが。だがお前も貴族では?と思うが黙って見ているだけにする。

 アレク曰く『馬鹿には、付き合ってられない』である。更にいえば、剣に手を掛けた以上痛い目を見るのは、自分だとわからない間抜けになど、構ってられない。である。


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