第19話 領地へ 怪我人

「アレクこっちは、大丈夫だったか?」

「あぁ。ヴァンス兄上、シア。こちらは方付きましたよ!兄上達は、どちらにいたのですか?」

「え?あぁ。パトリシアの護衛だよ、全く…パトリシアが、キングコボルト2体をすんなり倒したよ……俺の出る幕がなかった(瞬殺だそ!)」


 と………落ち込むヴァンスだ。


「お兄様、ごめんなさい。だって……連携って苦手なんですよの?」


 私は、と言い訳をしてみたが……通じるかな?すると、兄二人が大きなため息をついた。


「「はぁ~~~」」


(やらかすとは思っていたが、ここまでするとは思ってなかったよ。どうやって誤魔化すか?いや、誤魔化すのは無理があるな………。目の前で妹が魔物を一撃で、倒したのを見るのは慣れたつもりだったが、まさかキングクラスも一撃とは……。まぁ、私の妹は凄かったで済ませるか?)


 ヴァンスがなにやら考え込み黙る。

 そして、ヴァンスが指揮する専属騎士隊の隊長が走って来る。


「失礼します。ヴァンス様、あちらの方達がヴァンス様達と、お話がしたいそうです」


 隊長が走って来た方向に目を向けると、4人の男性が座り込んでいた。


「わかった!今行く。アレク、パトリシアお前達も一緒に行くぞ」

「「はい、兄上」お兄様」


 座り込んで居る4人の男達の側に行き、ヴァンスお兄様が声を掛ける。


「貴殿達、大丈夫か?怪我人は居るのか?」

「あぁ、貴殿達が手を貸してくれて助かったよ。先ずは礼を感謝する。怪我は大した事は無いが……つ!」


 と言って、男が腕を押さえる。


「怪我を、しているのか?」

「い、いや大丈夫だ。大した事はない」

「ですが、痛いのですよね?」

「だ、だが治療をする程でも………つ!」


 顔を歪ませまた腕を押さえた。


「あぁ、見てられないですわよ。腕を出して下さいませ?」

「い、いや?だが……」

「面倒な方ですわね。全く………」


 見ると4人全員が怪我をしていた、当たり前ですね?あれだけのコボルトが襲って来てたのですから。では、行きますよエリアヒール!


 すると、座り込んでいた4人にキラキラした光が包み4人の傷が治って行く。


「はい!痛みは取れましたね?」

「「「す、すまない。助かったよ」」」


 だが一人だけ礼を口にしない男がいて、何やら悔しがる。


「チッ!」


 今舌打ちしたのかしら、何故?


「そこの方、まだどこか痛みますか?」


 ん?と首を傾げる。まだ痛いのかしら?

 それならと悔しがる男の目の前に、移動して膝を折って屈んで、顔を覗き目線を合わせた。

 すると、男が目線を反らし短く礼を言った。


「す。すまん」

「大丈夫でしたか、なら良かったですわ?」


 クスリ、と笑い立ち上がった。


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