第8話 領地へ

 暫く待つと、お兄様に呼ばれた二人がサロンに顔を出す。


「お呼びですか?アレク様?」

「お嬢様、お呼びですか?」

「ええ。アレクお兄様が、私の食べてるショートケーキが欲しいそうよ?料理長に言って持って来て頂戴?後は……アイザックはお兄様に聞いて?」


 私には、用はないですわよ?


「アレク様?ご用は?」

「い、いや、あ!アイザック、シアから結界石を受け取って保管しろ。馬車の御者台に張る石だ大切にな?」

「は?はぁ?成らばパトリシア様。結界石を頂いても、宜しいでしょうか?」


 全く、突然言い出すのだから勘弁して欲しいわ!思考が間に合わないわよ?


「え?えっと、少し待って頂けるかしら?今用意しますわ………」


 アイテムボックスから魔石を一つ出して石に魔力を込める。

 すると赤く濁って居た石が、綺麗な赤い石に成る。その光景を見た三人は、凄いと感動を現す。


「流石で御座います。パトリシア様!綺麗な石で御座いますねぇ~」

「本当に、流石で御座います!」


 何故かグレンが私を誉める。滅多に無いぞ?後が怖い。ガクブルですよ私は!アレクお兄様後で覚えてなさい!


「そう?これで渡せるわ。はい、アイザック誉めてくれてありがとう。使い方は分かるかしら?」

「えぇ、大丈夫で御座います。確かにお預かり致しました。では、アレク様。石は明日使いましょう、パトリシア様ありがとうございます。これで御者も楽になります」

「では、パトリシア様。私は料理長に言ってアレク様のお菓子を、お持ち致しますね?アレク様少々お待ち下さい」


「ええ、お願いするわ」

「頼む……グレン。アイザックも彼方で食べると良いぞ旨そうだ!」

「承知致しました……アレク様。有り難う御座います」


 と言ってチラリと、アレクを見てサロンを出て行った。


「シア、あともう一つ頼みがある……」

「どうしましたの?」


 まだあるの!


「荷物なのだが……、私用にアイテム鞄をもう一つ作ってくれぬか?お前貰った鞄をアイザック用に渡してしまったのだ、私の物は馬車には入るのだが……」

「……大きさは?どれくらいですの?」

「前に貰ったのと同じぐらいが、良いのだが……」

「成らば………これなどどうですか?」


 出したのは小さなウエストバックだ、肩からも掛けられるタイプにした。まぁ、そんな使い方はしないと思うけれど……。

 容量は……4.5m×3m位かな?既に渡したのと同じぐらいのバックで、目立たない様に黒皮にした物を渡した。


「ああ、此れなら便利だな。大きさも前に貰ったのと、同じで丁度良い。因みに中は?」

「え?ああ、4.5m×3m位ですね」

「………」


 あら?色々考えてるわね?固まったかしら?


「どうしました?お兄様、狭いですか?」

「……嫌、ありがとう。シア、助かるよ」


 そこへグレンが、料理長お手製のケーキと紅茶をワゴンに乗せてサロンに戻って来た。


「アレク様、お待たせ致しました」


 目の前にショートケーキと紅茶が並べられた。


「ありがとう、グレン悪いな」

「いえ、とんでも御座いません」


 では、私は下がりますと言ってサロンを出ていった。


 この後、お父様、ヴァンスお兄様にも魔石とアイテムバックの催促をされました。


 なのでその都度色々と、言われるのが面倒なので魔石はすべての馬車用に作ってお父様に渡しました。


 因みに、お父様に相談した認識阻害の魔道具は、数個作って馬車に取り付けました。必要な時に使うそうですが……それで大丈夫なのかしら?


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