第7話 ~ 静観するパトリシア 7 ~

 その奴隷商人は、背丈が低く全身黒い服を見に纏い右目にモノクロームを付けていた。


「ヒヒヒッこれはこれは、国王陛下。ご機嫌如何ですかな?私をお呼びと伺いましたが、如何致しましたか?何か良い人材でも居ましたかな。ヒヒヒッ」

「あぁ、マルコシアス良く来た。早速だがこの二人を売りたいのだ」


 寝転がる息子とその横に居る、ピンク色の髪をした女に指を指す。


「ヒヒヒッこの二人ですか?ヒヒヒッ」


 と言いながら二人に近づき値踏みをし始めた。


「ヒヒヒッ。こっちのピンクのは、好き者が居そうですがね・・・どうやらこのお嬢様ちゃん、随分と遊んでますなぁ。生娘なら何とか値が付いたものを、価値が堕ちますねぇヒヒヒッ」



 そう言いながエミリアの髪を触る。


「キモ、あたしに触んなよ!」


 触るなと言い頭を振り嫌がる。


「そして……おやァ~?此方は……あぁ、噂の馬鹿王子ですかな?ヒヒヒッ。此方も売れませんねぇ……」


「成らば二人とも、犯罪奴隷ではどうだ?」 


 国王が聞く。


「犯罪奴隷ねぇ……ヒヒヒッ。なら売れますかねぇ?ですが何の役にも、立ちそうもないですよ?ヒヒヒッ」


「こっちの王子は、男娼にでも売りますかねぇ?ヒヒヒッ、多少は役に立つでしょうが。ヒヒヒッ」


 周りに居る者はこの奴隷商人を、気味が悪く感じて誰も口を開こうとしない。

 王妃は、陛下の隣に座っているが気分でも悪くなったのか扇子で顔を隠す。


「私達は。北の地の鉱山にでもと、思ったのだが?」


 更に国王が言う。


「ヒヒヒッ、彼処は……こ奴らでは役に立ちませんよ陛下。ヒヒヒッ……1日で、死にますよヒヒヒッ。運んでいる最中に死にますよ……」


「そ……そうか、ならば任せるとしょう。任期は13年だ」


 奴隷商人は、任期を聞くと渋い顔をした。


「ヒヒヒッ、13年でございますか……ヒヒヒッ、売れるまで待つのを入れてですか?それとも売れてから13年ですか?ヒヒヒッ」

「売てから、13年だ!」


 クレールが口を挟む。


「ヒヒヒッ、陛下それで構いませんかな?ヒヒヒッ」

「あ、兄上ひ、酷い。助けてパトリシア!!パトリシア……」


 裏に居るパトリシアが、聞きたくないと耳を塞ぐ。

 その場に居た兄達に、ルーベルトの声がパトリシアに届かないように庇われる。


「シア、今だけ遮音の魔法を使え、聞きたくは無いだろう?」


 耳元でアレクが囁く。


「お兄様、分かりました。ですが、タイミングを見て出て行きますわ。でないと、一生後悔します。一連の流れで切りの良い時に、出ていっても良いですか?良いですよね?」


 パトリシアの迫力に負けて、ヴァンスが了解を出す。


「成らば、チャンスを待てよ?」

「分かりましたわ!」


 そして家族が居るこの場所だけに、魔法を掛けて声が届かない様にした。

 これで少し楽になった。

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