閑話 国王のケジメ・・・・6

 ハインツが執事のバレルを連れ、クレールの部屋を訪れた。


「兄上?如何致しましたか?」


 急な兄の訪れで少々驚くが……何か話があるのだろう。


「急にすまんな、クレール」

「いえ……まぁ、お座りになりませんか?ワルド!兄上と、私に何か飲み物を頼む」

「畏まりました」

「さて、私に何か、話でもあるのですか?」


 ワルドが入れたお茶を、受け取りながらハインツが話し始める。


「たいした用も無いのだがな……ルーベルトの話だ」

「ああ……それが?」


 全く何の感情も篭っていない声で返事をする。


「それがって!まぁ良い……あれに付き纏って居た、令嬢の素性が分かったよ」

「そうですか……で?何処の誰です?」

「シュバン子爵が絡んでいたよ、養女だそうだ」

「シュバン子爵?」


 クレールが聞いた事もないと不思議な顔をする。


「どうやらお前も知らぬ様だな?その子爵は、元々伯爵だったそうだよ」

「ほう?伯爵ですか……では不正でもして降爵でもさせられましたか?」

「正解だ。どうやらその当時の、徴税官補佐役だったらしい。そこでの横領が宰相に暴かれて、命は助かったが、領地の没収と追徴課税、爵位降爵で、納めたらしい。そしてその資料が……これだ」


 バレルが当時の事件の資料をクレールに渡す。

 渡された資料を、クレールが目を通し始めて暫く経つと資料から顔を上げる。


「これ、何年前の話ですか?年表記がされてませんよ、管理がずさん過ぎですよ?」

「まぁそうだな?だが私達がまだ幼い頃の、話だそうだ。15年も前の事らしい」

「はぁ……逆恨みの巻き込まれですか?パトリシア嬢は……馬鹿なルーベルトのせいで……」


 やはり私が先に、パトリシアと婚約をすれば良かった……。


「どうやら、そうらしい」

「そうらしい?とは……」

「まだ子爵家全員を、捕らえてい無いからだ。先程父上が命を出したばかりで、事情を確かめていないからな」

「そうでしたか……で?私にこの話を聞かせてどうしょうと?」


 何の用ですかね?


「先程も言ったろ?大した用は無いとな。だが少し確認したくてな?」

「確認ですか?」

「ああ、お前パトリシア嬢をどう思って居るのだ。先のルーベルトが居る前での話だと、妃に迎えたいと言っていただろ?」

「ええ、まぁ……」

「何だ?勿体ぶらずに話せよ?」

「はぁ……まぁ兄上だから話しま……やっぱり良いです。なんでもありません」

「そうか……なら良いさ、取り敢えずルーベルト絡みの、話だけだったしな」

「そうでしたか。わざわざ、ありがとうございます。でしたら父上からの、お呼びを待ちましょう」

「あぁ……ではな」


 と言って、ハインツがクレールの部屋から出ていった。

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