5 ファーストコンタクト
紫の煙が一つの塊になって姿を現す。
白いローブて長い艶めいた黒髪が特徴の女は、ビルの屋上でとある一点を見つめていた。
「――――そこか」
ダンッ!!とビルの壁を蹴って高速で移動する。
空は飛ばないのかだって?だって脚で動いた方が早いんだもん。
ヒュンヒュンとビルの屋上を飛び移ってると、すぐに目的地についた。そしてそこに待ち構えていたのは瞳が赤く染まったペストマスクを着用した男。
両手には忌々しいスナイパーライフルが握られていて、有無も言わず男はその引き金を私に向けて引いた。
即座にクリアに光る壁を作り銃弾を防ぐ。
これは大気中の水分や結晶、ゴミとかその他もろもろ、とにかく大気中に漂ってる目に見えないものを魔力で超高密度に圧縮させて壁を作る魔法だ。
普通の魔法使いがやっても手の平サイズが限界だが、私レベルの大魔法使いになると人一人覆うことのできる壁を作ることなど造作もないことなのだよ。
「挨拶もなしで銃弾ぶっ放すとは、レディに対するマナーが足りてない奴だな」
「―――――」
「あぁそうかい。お前が私を襲った犯人だな?目的はなんだ。誰の命令でやってる」
「貴様に答える必要はない。今ここで部様に死体を晒すのだからな」
「あれ?自分で自分に死亡宣言するとか頭おかしいんじゃないの?それとももしかして私に言った?はっはっはっは!――――面白いジョークだな」
男が懐からサブマシンガンを引き抜き、銃口を私に向ける。引き金を引く前に、私の膝蹴りが男の顔面を砕いた。
屋上の柵をぶち抜き、地面の平行に空を飛ぶ。すかさず私はそれを追い掛ける。男は負けじと吹っ飛ばされながらも銃弾を発射した。
「そんなブレブレのエイムじゃ、私に当たるわけねぇだろ。私の惚れ惚れとするエイムを見な」
魔力を束ね、指先に巨大な火球を作る。絵図らが完全に某宇宙の帝王に見えるが、星を木っ端微塵にするほどの威力はないのでご安心を。
「吹っ飛べ」
「ッッ!?!?」
男の体を包み込む程の大きさの火球が激突する。瞬間、火球は弾けエネルギーの塊が暴力となって男を吹き飛ばした。
爆発の余波で周囲の建物が少し崩れる。
あ、やべ。やりすぎちまったか?でも特撮映画とかだってビル壊したりしても正義の味方扱いされるから、いいよね?
え?私は正義の味方じゃないって?
それもそうでした。
「お、まだ生きてるのかしつこいやつめ。まぁでも、私の胸に風穴を開けてくれたんだ、その程度でくたばっちまったら鬱憤を晴らすのも晴らせないからな」
「――――チッ。貴様、こんな街中で魔法を放ってただで済むと思っているのか」
「それに関してはさっき開き直ったばっかだから。あ、そうだ。殺す前に聞き出さなきゃならんことがあったわ。どうやって全世界の魔法使いを根こそぎ滅ぼしたのかは知らないけど、なんでこんなことするん?」
「ふっ。それは自身の胸に手を当てて考えてみることだな。当てれるような胸もないか。いずれ後悔するぞ、貴様らがやってきた行いすべ、ぐふっ!?」
「誰が当てられる胸もないだってこの野郎。今すぐ殺されてぇのか、あぁん?」
胸倉掴んで持ち上げる。端からみたら完全にカツアゲ現場レベル99みたいな光景だが、他人の目線に負けず私はこの野郎に制裁を下すのです。
全国の貧乳達の怨念が詰まった拳を食らえ!!
「ひゅー、汚ぇ花火だぜ」
建物何個も突き破って空へ右斜め上がり。これにはプロ野球選手もびっくりなホームラン。
だが、
「サヨナラホームランで終わると思ったか、馬鹿め逃がさん!!」
魔法を使って男の行き先まで転移する。そのままダイナミックキックをかまし、地面へ男の体を縫い付けた。
「――――。かほっ」
「まだ生きてんのか。最近の技術は凄いね。私の攻撃を受けても生きてるくらいには硬い装甲を作れるんだから。あ、そうだ。さっきの質問の続きと行こうか」
「ぐっ、あぁ!?」
グリグリグリ。
つま先を男の腹に突き立ててドリルみたいに回す。私の体は普通の人間とは違うし、魔法で身体強化してるからちょっとした攻撃でも激痛のはずだ。
吐かないなー中々吐かないなー。あくびが出てしまうよ。
「―――ぐっ。決して我々は屈せぬぞ、星の癌めが。我々は世界を救う、貴様ら魔法使いを、魔法を全て滅ぼして正義を全うする!!」
星の癌?正義?
何の話だ。私達魔法使いが一体何をしたと言うのか。まぁ確かに『私』や他にもクズな魔法使いなんか数えるほどいるけどさ。
あ、もしかして魔法使いに復讐の炎を燃やしてるパティーン?んーけど全世界の魔法使いをほとんど根絶やしにできるやつが、そんなちゃっちい理由でこんなことするかね。
それなら、復讐の対象が一人の魔法使い、じゃなくて『魔法使い』そのものになってるのもなんか変だなー。少なくとも、私はこんなやつ知らないけど。
『我々』って言ってるからには、こいつ以外にも魔法使いを根絶やしにしようとしてる奴らがいるってことだよね。
もしかして良いように言いくるめられてるだけじゃないのこいつ?変に正義感刺激されちゃってさ。
色々考え事をしていると、男の方に動きがあった。
よくみたらこいつの全身に爆弾巻き付いてるやんけ。おいおいおい、なんだそのもごもごした動きは!?やめろぉ死ぬきかぁ!?
「魔法使いに呪いあれ!!!!」
######
いやー死ぬかと思った。死なないけどね。
まさか自爆するとは思わなかった。欲しい情報もろくに聞き出せなかったし、何より後始末が面倒くさい。ネットはびこるこの時代、すこしでも騒ぎがあったらすぐに書き込みがされてしまう。
咄嗟に防音の結界はったけど、爆発の光はみられてる気がする。人気のない路地裏とはいえ、爆発で壊れた地面とかコンクリートとか直さないと誰かに発見されたら困る。
ちっ、逆行魔法でも使うか。
「――――その必要は無い」
「あ?―――――――」
ぶじゅり、と。
私の耳が生々しい音を捕らえた瞬間には、視界は赤く染まっていた。
もう一人、いた?
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