1 とあるポンコツの超能力
場所は突然移り変わり日本、北海道にて!
一人の少女が助けを求めていた。色素が抜けた見たいな白い髪に赤い目。フード付きパーカーを羽織りハーフパンツを着た特徴のない服装。
髪はショートでなんともボーイッシュな雰囲気の少女。そんな彼女が何故助けを求めているかと言うと。
「はぁー………また失敗。これで36回連続失敗。こんだけ失敗してたら壁に埋まるのも慣れたものです。あー、ちょっとそこのあなたー?携帯貸してもらえませんか?」
「っえ!?………あの、そのすみません」
私が声を掛けると困ったような顔をして逃げてしまった。そりゃそうだ。だって人が壁に埋まって、それで平然と慌てることなく話しかけたら怖いと思う。私なら全力疾走で逃げ出す。
ここは人通りが少ないから次に人が現れるか分からない。明日学校あるから出来れば早めに脱出したいのだが………。
するとそんな不審者も顔負けの怪しさを放つ私に声を掛けてきた人が一人。
「さっき壁に埋まってる白い髪をした不審者がいると通報が入って来たら、また君か!!いい加減にしてくれないかい?私達も暇じゃないんだよ?これで何回目だい!?」
「連続失敗が36回、前に成功した時より前の連続失敗も含めるとちょうど50回目です。おめでたいですよ、記念日ですね」
「こんな記念日があってたまるかってんだい!………はぁ、そこ大人しくしといて、今引っこ抜くから」
「はーい」
私はされるがままに目の前の人に救出される。なんだかんだ言っていっつも誰よりも早く駆けつけてくれるから助かってる。
「んんー!助かりました。ありがとうございます、幹也さん」
背筋を反り、全身を伸ばす。
この警官服を来た30代半ばに見える男性の名は山元幹也さん。よく壁や地面に埋まった時に助けてくれる警官だ。
「もうすぐで帰れると思ったのに君のせいで台無しだよ。帰りにジュース奢ってくれ」
「民間人にジュースねだるとかそれでも警官ですか?うわーないわー」
「僕は毎回君の頭の悪い行動のせいで引っ掻き回されてるだよ!?せめて感謝の意を込めた贈り物とかさー」
「今の録音したんであとでSNSで拡散しときますね。タイトルは見返りを求める正義の警官(笑)の衝撃の一言、ですね」
「スミマセン勘弁して下さい怒られます」
この警官には大人のプライドという物はないのか?速攻で高校生相手に頭下げたぞ。まぁでもこれがいつもの幹也さんといかなんというか。
「にしても、君のそのポンコツ『超能力』はどうにかならんなか?いつまで経ってもちっとも上達しないじゃないか」
何故壁に埋まっていたのか。それは私が超能力者だからなのだ!!
…………まぁこんなことを言えば端から白い目で言われるので説明しよう。誰に?さぁ。
私こと如月魔里(きさらぎまり)は実は超能力者なのです。私のおじいちゃんがですね、それはもう変態レベルの科学者でして。
『ちょっと実験に付き合ってくれね?』
と、お小遣いをチラつかせ言ってきたのです。まんまと金に載せられた私は実験内容もよく聞かずに受け入れました。
………そして目が覚めたら髪の毛は白くなって目は赤くなって、『超能力』が使えるようになりましたとさ。チャンチャン。
うん。マジで何を言っているのか分からないと思うが、マジでこんな感じなんだ。つまりね、超能力開発なるものをされてしまったわけだ。
超能力を科学技術で再現する。得体の知れないテクノロジーが跋扈(ばっこ)するこの時代でも超能力は流石に不可能と言われている。
だが私のおじいちゃんはそれを難なくやり遂げたのだ。
いや、ガチで怖かったよ。あとでおじいちゃんに内容聞いたら、
『え?そりゃあ脳みそちょちょっと弄くって』
弄くって、じゃねぇよ!!孫の脳みそを平然と弄くるなぁ!!………まぁ、自業自得なんだけどね。
さて本題に戻ろう。この超能力、実は欠点があるのだ。
「ポンコツ言わないで下さい。実は最近、念動力(サイコキネシス)は出来るようになったんですよ!ふふん」
「ふーん」
「その目は疑ってますね?いいでしょう、今から幹也さんの自転車を浮かしてしんぜよう!」
「ちょ、辞めてくんない?壊れたらどうすんのさ」
「大丈夫です!少し集中するので黙ってて下さい…………むむむむむ」
私は集中力を高め、幹也さんの自転車に向かって念じる。カタカタと自転車が独りでに動き出し、徐々に浮いていく。
驚いた顔で浮いた自転車を眺める幹也さん。それだよそれ、その顔が見たかったのさ!
「ふふふははは!どうです幹也さん!もうポンコツだとか頭の悪いだとかは言わせませ、あ」
「あ」
浮いた自転車は中心からバキン!と音を立てて真っ二つになった。
「「……………………………………………………………………」」
そう、私の超能力。それは、全くもって使いこなせないことなのだ!!さっき壁に埋まっていたのも瞬間移動(テレポート)の練習だったのだが、座標の設定が上手くいかず、壁に埋まってしまったのだ。
私の瞬間移動(テレポート)は自分の体とその体積分の物体の位置をを入れ替える力なので死にはしないが、扱えないのでよく壁に埋まったり地面に埋まったりする。
酷い時にはビルの窓に埋まったこともある。その度に幹也さんが助けてくれていたという訳だ。
「………という訳で私は帰りますね」
「おい待てごら」
「きゃー助けてー。お巡りさーん」
「お巡りさんは僕だよ!!どうしてくれんのさ!弁償しろ弁償!学生だとか知り合いだとか知らねぇからな!半分は払ってもらうからな!!」
「大人げないですよ幹也さん!こっちにはさっき録音した音声が……」
「こっちにはさっき壊された証拠品があるんだけど」
「…………………………………………」
互いに牽制しあう。
今思ったんだがなんだこの状況。ジリジリと幹也さんが迫り来る。ガチで叫んでやろうかなと思ったその時、
「キャーー!!誰か、あの人を捕まえて!」
「クソ、こんなタイミングでひったくりか。如月君、必ず払ってもらうからね。とりあえずそこで待ってなさい!」
そう言って幹也さんは泥棒の背中を追い始めた。
速ー。流石、若い頃に陸上大会で何回も優勝してるだけあるね。待ってろと言われたが、待てと言われて待つ人間などいないのさ幹也さん。私はここでお暇(いとま)させてもらう。
けど、自転車を壊してしまったのは申し訳ないからおじいちゃんに直してもらえるか頼んでみよう。あの人なら直すどころか魔改造して時速100キロくらいでるロケット自転車になるんじゃないか?
早速おじいちゃんに回収しに来てもらおうと携帯をバックから取り出そうとしたその時、
「くっそ!これほんとに銃弾なのか!?魔法貫通しやがったぞ」
「ん?」
どこからか声が聞こえた。女性にしては低めの、切羽詰まった声だ。周りを見渡してもそれらしき人物は見当たらない。無意識の内に地獄耳でも使ってしまっただろうか。
「だあぁぁぁローブが燃えたぁぁ!!テメェ許さん私がずっと身に付けてる一張羅を!!」
うんやっぱ気のせいじゃないわ。はっきりと聞こえる。そもそも地獄耳だったらエコーがかかって聞こえるし。ていうか地獄耳使うとそこにいる人達全員の音を拾ってしまい頭がかち割れそうになる。
魔法………?ローブが燃えた?一体私の見えない所で何をやっているんだ?
まさか…………上?
「…………へ?」
「いつまで追い掛けてくるんだこの銃弾?最近の科学技術は怖いねぇ!?」
上空には杖に両脚を乗せた謎の女性がぐるんぐるんと飛行していた。
な ん だ こ れ
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