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「まず、『管理課』って何ですか?」
「正式名称『東方管轄区管理課』。東方と名付いていながら東方に詰所はない部署。ここは特殊部隊にあたる」
「具体的には?」
「まぁ、表向きではない任務を専門的に行う少数部隊…ってところかな。無論、管理課が仕事をする時には『管理課』なんて名前は使わない」
「『管理課』じゃない?だったら何て言うんですか?」
「『影(shadow)』」
「『影(shadow)』?」
「そう。名前の通り、影だ。…彼等を影と呼ぶ以上、彼等を影で隠す存在もある」
「どう言う意味ですか?」
「管理課には今、2人の影がいる。1人はアイゼン、もう1人はシュタール。任務中、それを隠す壁の役割を果たす部署もあるんだ」
「壁…」
「そう。通称『壁(wall)』。1人の影に対して、少数若しくは1部隊の壁」
「…まさか…」
「イーヴル、何に気付いた?いいよ、言ってよ」
「俺、ここが育成用の部隊だと聞いていました。だけどいつまで経ってもメンバーは入れ替わらない。それは…6隊そのものが『壁(wall)』として育成されているから…?」
「…ご明察」
「リアンは?リアンはそれ、知っているんですか?」
「いいや、知らない。知らないまま、経験を積まされている」
「…何でそれを、リアンじゃなくて俺に教えたんですか?」
「イーヴル、君がそれを欲したからだろ?」
「…」
「僕が6隊に異動して来たのは、前の上官がシュタールの壁だから。シュタールとシュタールの壁から、ここをアイゼンの壁にする様に言付かったから」
「最初から…その為に?」
「そう。アイゼンは最初から影になる事が決められていた。そして6隊は、アイゼンの壁になる事が最初から決められていた。その為の人員なんだよ。隊長もアオイもイーヴルも他の皆も。僕を含めて皆、その為に招集された」
端末に表示された情報と同僚の説明に相違は見受けられなかった。
「さてイーヴル。君は僕が与えたこの情報をどう扱う?たまたまイーヴルだったけれど、僕が6隊の真相に気付きつつある人に情報を与えるのはもともと想定済み。寧ろそう言う権限を持たされてここに来た訳だし」
「ここがその壁になるのは決められた事で、話を聞く限り該当部隊に気付かせ、自らそれを知り、そこへ向けて行く。上はそうしたいんだな。…だったら俺は…それを纏めて俺の見解としてリアンに報告するまでだ」
「そっか。それも手だな。ここから先はイーヴルに任せるよ。だけど協力は出来る。聞きたい事があれば、皆に気付かれない様に聞いてくれて構わない。上手くやってくれ」
同僚は端末をシャットダウンすると、ケーブル類を含めそれらを端末用のバッグに仕舞った。
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