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…ピピッ…。
『地上班より、対象テロリスト2名を拘束完了しました』
…ピピッ…。
「ご苦労様です。そのまま一旦影へと引き渡して下さい。こちらもすぐに撤収し、地上班と合流します」
…ピピッ…。
『了解しました』
狙撃班はスナイパーライフルを肩へと担ぐ。リアンは黒曜と遺留品がない様に確認をした。全てが完了したところで、フックが付けられたワイヤーを瓦礫に引っ掻けると、穴から下へと垂らす。
「地上班へ通達、降下を開始します」
下へと声を掛け、まずは狙撃班の2人がワイヤーを伝い降下をする。次に黒曜、最後にリアンが降下すると、周りに離れる様に伝え、ワイヤーの端を振るう。その弛みは上へと伝わり、瓦礫に引っ掛かったフックが外れた。あとはそれを巻き取りながら回収する。
その間にアイゼンは拘束されたテロリストの所持品を探っていた。1人のポケットから緩衝材に包まれたUSBメモリースティックが発見された。
「リアン、俺の仕事は終わったから国境警備隊への引き渡しを任せて良いか?」
回収したメモリースティックを自分の軍服のポケットに仕舞いながら、アイゼンがリアンに声を掛ける。アイゼンは国境警備隊に存在を覚られてはいけない。早急に離脱をしたかった。
「アイゼン、大丈夫か?この仕事」
「俺の仕事はここまで。あとは兄貴とスミさんの仕事」
「…それなら良いが…」
「心配するなよ。あとで連絡する。だから…──」
「了解」
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全ての撤収を終わらせ、壁は第6小隊として帰還を開始した。今回の仕事は半数、15人での仕事だった。1台のトラックに荷物を積み、もう1台に人員を乗せ帰還をする。無事に帰れる事を感謝した。
アオイは合流したが、アイゼンは別行動なる。
だがアイゼンは平気だろう。アイゼンはリアンと約束をした。
──『心配するなよ。あとで連絡する。だから…終わったら飲みに行こう』
壁と影では扱っている任務が違う。同じ現場に居てもやる事は全く異なる。リアンはとにかくそれが心配だった。影はあまりにも『裏』に染まり過ぎている。そして壁はあまりにも『影を隠し過ぎる』。いつかこれが歪みとならないかと、心配している。
だが、彼等は所詮軍属。上の命令には逆らえない。
壁の仕事をこなせばこなす程、リアンは少しずつ益々えげつなくなって行く。それは壁としては必要な事なのだろう。あくまで壁は影を隠す部署であり、表裏一体の部署。故にリアンとアイゼンは一心同体。まさに軍部の闇を背負う部隊と言えよう。
途中立ち寄った休憩ポイントでリアンは皆に缶コーヒーを配った。何年も一緒に過ごした仲間故に、ひとりひとりの好みをきちんと把握して、ひとりひとりが好きな缶コーヒーを手渡した。
「生きている事に乾杯」
本当ならここにアイゼンも居て欲しかった。でもそれは我儘と言うモノ。ぐっ…と口にする事を堪えた。
「さぁ、帰還をしよう」
我儘など言える立場ではない。彼達は『壁』と呼ばれる存在。これからも影を隠さなくてはならない。知ってはいけない事もたくさん存在する。どれだけ気になろうが心配しようが、触れてはいけないモノに触れてはいけない。それも『壁』としての役目だからだ。
──アイゼンは大丈夫だろうか。
心配を表にすら出せない。それが『壁』と『影』。
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2020/04/13/009
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