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…ピピッ…。この無線は全体対象ではなく、アイゼン個人への無線。繋ぐとリアンは小さく呟いた。
「アイゼン、今日は遠慮なんかしなくて良いんでしょう?」
『多分な。この際だから徹底的にお前の信念でやってやれ。お前は限りなく無血拘束を望んでいるんだろ?』
「やれると思うか?」
『リアンなら余裕だろ?』
「アイゼン…いや、何でもない。早く終わらそう」
『あぁ、そうだな』
リアンは無線を再び全体対象にする。薄暗くなりかけた空を見上げ、大きく息を吐いた。
…ピピッ…。
「壁総員及び影に通達する。5分後に作戦を開始する。間近になったらカウントを開始する。きっちり終わらせて帰還をしよう」
…ピピッ…。
『了解』
『Aye,Sir』
それぞれがそれぞれ割り当てられた配置に着く。屋根にリアンを含め4人がいる。イーヴルもハンドガンからスナイパーライフルに持ち替え、屋根で待機していた。
アオイとアイゼンは地上側での待機だ。2人は即時突入をしない。アイゼンは影の仕事をするだけだし、アオイは今回アイゼンの護衛に近い役割だ。壁とは言え、任務内容が異なる。
屋根待機組の内、狙撃班の2人はスナイパーライフルを構え、1人ずつ担当を決め照準を合わせる。狙うはテロリストの持つハンドガン。残るリアンと黒曜の2人はテロリストの位置を考慮して持ち場となる屋根の穴の脇に、1個ずつスタングレネードを落ちない様に置いた。
…ピピッ…。
「壁総員及び影に通達する。開始まであと1分」
…ピピッ…。
「…5、4、3、2、1──Go!」
ピンを同時に抜き取り、手で払う。カランカラン…と、まず2個のスタングレネードが屋根の穴から下へと落とされた。テロリストが落ちて来た物を確認した時にはもう既に遅い。刹那、閃光と衝撃音。怯んだテロリストの1人は持っていたハンドガンを落とした。それを上からスナイパーライフルが射出した弾が更に遠くへと弾き飛ばす。
もう1人のテロリストは、ハンドガンを持ったまま。故に手を掠める様に発砲し、ハンドガンを落とさせると急かさずもう1発発砲し、弾き飛ばした。
地上班数人がハンドガンを構えたまま2人を取り囲む。武器は無力化され、行動も上手く取れない。抵抗はとても出来る状態ではなかった。最後に地上班がスタンガンを使い、2人を完全無力化させ拘束をした。
「…はぁー、徹底的にえげつねぇな」
狙撃班として上から一部始終を見ていたイーヴルが、自分のスナイパーライフルを肩に掛けながらリアンにそう呟く。リアンの『えげつない』と他称されるその戦略を見るのをイーヴルは楽しんでいる節がある。軍学時代の演習でも、イーヴルはリアンのえげつない戦略を見ながらそれをそっと吸収してきた。
「俺、お前のそう言うところ、好きだわ。そのえげつないところ」
「…男に告られても嬉しくない」
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