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─Third party viewpoint.─



 …ピッ…。

『監視2班より報告、制圧対象者は2名。1名は人質を取り3階書斎に籠城中。ハンドガン所持を確認』

 …ピッ…。

「本部、了解」


 …ピッ…。

『監視1班より報告、1階北側廊下にてターゲットの1人を確認。左手に何枚もの呪符を所持、それを廊下の壁に貼り付けています』

 …ピッ…

「本部、了解」


 本日の6隊はピリピリしていた。仕事内容があまりにも悪い。ここの小隊長があまり好まない内容、『籠城戦制圧』。別に遠距離狙撃で命を狙ってしまえば簡単に終わる仕事なのだが、いかんせん小隊長がそれを避けたがる。…とは言え、状況次第では射殺も辞さないのが軍部だし、小隊長も射殺必須になれば容赦はしない。


 現場となった建物はある特殊製紙会社社長の自宅だった。社長と奥方は出ており、邸宅にいたのは数人の使用人のみ。この中で1番弱いとみたのか、若い女性が人質に取られている。


 ターゲットは2人。3階にて籠城している男の制圧は多分簡単に終わる。問題は1階にて姿を曝している呪符使いの方だ。複数枚の呪符を持っていると思われるこの男。それをある程度の間隔を置きながら、籠城している屋敷中に貼り付けている。目的がわからないし、彼の手の内にどれ程の枚数の呪符があるのかわからない。手練れであるのであれば、呪符そのものが高位クラスである事も考えられる。不用意に近付こうものなら呪符で返り討ちに遭う事も想定される。

 今日は6隊も別の任務もありフルメンバーではない。全体の半分強の16人しか居ない。上手く行動して収めたいところだった。


 …ピッ…。

「本部より監視1班へ。貼り付けられた呪符の内容は読み取れそうか?」

 …ピッ…。

『監視1班より本部へ。無理です。この距離だと読めません』

 …ピッ…。

「本部、了解」


 今回、たかが2人に手こずっていた。呪符使いの行動が読めず、不用意に近付けないのだ。


「せめて札の内容がわかれば対処の検討がし易いのにな」


 小隊長が思わず呟く。このまま対処法が見えなければ、上層から射殺命令が下るのも時間の問題。小隊長の本意ではなくなるが、それもまた仕方がない事。そうでなくとももう強行は必要だろう。小隊長が本意を飲み込んで、効率を優先しようとしたその時だった。


「…リアンさん、俺、札が読めます」


 小隊長に具申する者が現れた。それは6隊の誰もが予想していなかった人物だった。この6隊で最年少のアオイだ。その場に居た誰もがその発言に驚いた。


「アオイ、札をどう確認する?」


 指揮官モードのリアンには、もういつもの柔らかさはない。厳しい眼差しでアオイを見る。意見をしっかりと聞く。


「監視班で識別が出来ないのであれば、俺が潜入します。1人は3階に籠城、1人は屋敷内を周回しているのなら、動きさえ把握出来れば接触せずに確認出来るかと思いますが?」

「アオイ、どこまで札を読める?」

「…多分、この中の誰よりも」

「アオイが札を使っている所を一切見た事はないが、普段から札を行使している者よりも読めると言うのだな?」

「はい」


 リアンは渋い表情を見せ暫く深慮する。具申が出た時点で結論は多分決まっていた。改めて検討しても結果は同じ。


「アイゼン、現時点を以て本部をアイゼンに委ねる。アオイは建物への潜入及び、呪符の読み取りと解析を。僕はアオイの護衛に付く」

「待てリアン!俺が護衛じゃ駄目なのか?お前がここを離れる?お前、隊長だろ?」

「アイゼン、潜入だよ?しかもショッピングモールの様な大きい場所ではない、単なる屋敷。ライフルなんか持っていたら邪魔だし機動力がない。かと言って、アイゼンは近距離射撃が苦手だろ?だったら僕の方が適任だよ」


 痛い所を突かれた。


「それにアイゼンは僕と同等。誰にも文句は言わせない」


 リアンは自らが装備しているハンドガンのマガジンを確認する。タクティカルベストのポケットに入れてある替えマガジンとプラスチックケースの呪符も確認。最後に軍服の左上腕のポケットに仕舞われたスチールケースの呪符も確認した。


「アオイ、行くよ」


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