◇003/呪符の話
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◇003/呪符の話
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俺は他の世界を知らないからわからないが、俺達の世界には『呪符』と呼ばれる物がある。所謂『魔法アイテム』と言う物だ。
大きさとしてはタロットカードくらいのサイズ。和紙に似た触感の紙に、効果に合わせた書き込みがされた札だ。内容に応じて回復させたり、炎を起こしたり、氷をぶつけたり、電気を流したり、様々な事が出来る札。
威力そのものは多少使用者の相性に左右されはするが、基本的には呪符に込められた能力と使用者のキャパシティによって変わって来る。どんなに高位使用者であっても呪符の能力が低ければ効果は低いし、どんなに高位能力呪符であっても使用者の能力が低ければやはり効果は低い。ただそれはあくまで『基本的に』な話。
その呪符を持って解放宣言を口にして呪符の力を解放すれば効果を得られるが、その実、呪符を行使する事よりも呪符を入手する事の方が難しい。
基本的な、それこそ基礎的な内容であり効力がとても弱い呪符であれば、ちょっと呪符作製の基礎を学べば作る事が出来る。だが強力な威力を持った呪符や、遠隔操作の様な特殊機能を行使出来る呪符などは専門の職人でしか作製する事が出来ない。俺は詳しくないからいまいちわからないのだが、きっと技術が必要になるのだろうな。
そうなると1枚辺りの単価が跳ね上がるし、何よりも入手困難となる。呪符は確かに多大なる効果を得られるが、それそのものは簡単には得られないと言う事に他ならない。
特に威力の大きな呪符は、それそのものが凶器になるが故に、よっぽどの理由で職人が納得しない限りは作製受諾をしないなんて事も当たり前にある話だ。
他にも記名呪符と無記名呪符が存在する。読んで字の如く、記名呪符は記名された本人でしか呪符の効果が得られない。どんなに高度使用者が行使しても、発動すらしない。逆に無記名呪符は、誰でも発動させられるが、自分のキャパシティを超える効力は得られない。どんなに呪符が優秀で強力な物でも、使用者の能力が低ければその呪符を有意義に使う事は出来ない。自分の身の丈に合った呪符を選ばなければ、呪符の能力を無駄にしてしまう。
一概に『呪符は便利』などと言えないのだ。
更に記名呪符は、記名された人間に寄り添う性質を持つ。故に護符として所持する事も可能だったりする。
俺はお世辞にも呪符との相性が良いとは言えない。基本の呪符ですらも、大した効果は得られない。強いて言えば氷の呪符。これだけは他の種類の呪符よりも僅かばかり効果が大きい。そんな程度。だから滅多に呪符を手にしない。
ただ相方はそう言った血筋なのか、どれもそつなく行使するし何よりも威力は落とすものの遠隔操作の呪符ではない札も、数m程度なら離れた場所に効果を現せる事も出来る。…そうだよ、あいつがおかしいんだ。
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リアンの軍服の腕ポケットには、ケースに納められた呪符がいつも入っている。薄いタイプのスチールケースだ。それとは別に、いつも身に付けるタクティカルベストのポケットにはプラスチックケースを入れている。それら両方共、数枚の呪符がいつも納められていた。
スチールケースには彼の弟が、彼の為に作製した記名呪符が数枚入っている。呪符の内容は基本的なものだから、威力はそう大きくはないと本人は言っていた。しかし彼はそれを使う事なく、肌身離さず持ち歩いている。かれこれもう1年程、大切に持ち歩いているのを見ている。
プラスチックケースには無記名呪符が数枚。中を見た事はないが、いつも使っている呪符から考えると炎系の発破の札と回復系の札が入っているのだと思われる。
基本的にそれは人の物。自分がそれを手にして見る機会などないと思っていたし、どうせならそんな機会はない方が良かった。
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