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僕自身、あの時に貰った呪符はいまだに使えずに居る。だがそれはあくまで『僕が使えないでいる』だけ。記名呪符は僕にしか使えない。それは呪符の法則として絶対だ。だが時に例外的事例は存在する。1枚目の呪符は、護符と化した呪符が僕を助ける為に、相方を媒介にして呪符としての役割を全うしてくれた。だから僕は今、生きていられるのかもしれない。
ただ、折角僕の為にルカが作製してくれた呪符を、僕は人を傷付ける為に使いたくはなかった。ルカの器用さを鑑みれば、この呪符はきっと優秀な札だろう。だからこれらも呪符としてではなく護符として持ち歩く事にしている。
ルカと再会してからもう3年。当時カレッジの2期生だったルカは進学を選び、今やグラデュエートスクールの学生だ。僕と言うしがらみに囚われず、ルカが選んだ道を進めば良い。
呪符の入ったスチールケースを閉じる。それを軍服の左上腕のポケットへと仕舞う。別のケースには無記名の呪符が何枚か入っている。1枚だけ取り出すと、そのケースは軍服の上に着込んだタクティクスベストのポケットへと仕舞う。
ベルトにはブレードとハンドガン。他のポケットには替え弾倉。今居る場所は制圧戦の現場。
「第6小隊、出ます」
さぁ出よう。これが僕の選んだ道だ。ルカはルカ、僕は僕。全く違う道を選んだが、互いに後悔はないし恥ず事もない。胸を張ってその道を進もう。
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2019/11/08/002
以下、補足。
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「なぁ、ルカ。何でコンビニでバイトなんかしていたんだ?」
「その方が世間を知れると思ったから。財界だけじゃなく、庶民的な事も知っておきたいって思ったから」
「何であの場所なんだ?偶然なのか?」
「兄さんが軍事学校に行ったって事は父さんから聞いていたんだ。卒業すればどこかの部隊に配属されるだろ?あそこは司令部の近くだから、いつか兄さんに会えるんじゃないかって思った」
「もし中央管轄区に僕が戻って来なかったら?」
「多分グラデュエートスクールを卒業するまではバイトしてたんじゃないかな?」
「…因みに何年あそこでバイトしているんだ?」
「んー?3年くらい?」
「3年くらい前だと…初配属のあとだから、僕は西方管轄区に居たね。国境に居たよ」
「…兄さん、良く国境から帰って来られたね…」
「…本当だね…ルカ」
「…ん?3年くらいって。その頃ルカ、ハイスクールの3期生じゃないのか?良く学校がバイトの許可を出したね」
「だって俺、主席だし生活態度も良かったから、ちゃんと説得したら許可を出してくれたよ」
「…あぁ、そうなんだ」
「そうなんだよ」
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