第18話 恋

 今日は砺波くんとデートした。その後もはや日課となっているゆかりのお見舞いに来ていた。


「ねぇ、ゆかり。お姉ちゃんさ今とっても楽しいんだ。」


「砺波くんが現れてからずっと楽しいの。今まで散々蔑まれてきたのに、辛かったのに、今とっても楽しいんだよ。」


 私はただ、ゆかりに砺波くんのことを話しているだけなのに、なんで、なんでこんなにも鼓動が早くなるの。なんで、ドキドキしちゃうんだろう。


「ねぇ、ゆかりもしかしたらお姉ちゃん。砺波くんに恋…しちゃってるかも。」


         ◇◆◇


 あのデートから1、2週間違くが経った。あのデートの後からこころさんの反応が少し変わった気がする。

 まぁ、好意を持ってくれるのは僕としてもいいことなんだが、僕はこころさんとは付き合うことは出来ない。

 なんやかんや時が過ぎ、僕の命も後少しだ。

 今更付き合ってなんて言っても損をするのは、辛い思いをするのはこころさんなのだ。

 …だから僕は付き合うことは出来ない。そして、ゆかりさんが死んでいるという事を言わないといけない。

 

「ねぇ、こころさん。」


 僕はチェスの駒を並べながら問う。


「こころさんはさ…」


 僕の命も有限だ。後持って5ヶ月と言ったところだろうか。だからもうここで言うしかない。


「なに?」


「ゆかりさんは死んでるってことからなんで逃げるんですか。」


 こころさんの手が止まる。だが、僕はこころさんの顔から目を背けない。


「もう、知ってるんでしょ、今やってる事はただの現実逃避だっt…」


「るさい!うるさい!」


 そこまで言ってこころさんは今まで僕に怒号を飛ばした。


「あなたに何がわかる!私だって普通の女の子として産まれたかった!のに、なのに!ゆかりまで死んじゃって!逃げるしかないじゃない!今まで散々苦労して、辛い思いをしてきたんだから、逃げたっていいじゃない!」


「ゆかりさんを、その逃げる理由にするんですか。」


「うるさい!ほんとにあなたに何がわかるって言うのよ!」


 その言葉一つ一つからこころさんが僕には測りきれない程に疲れていることは明白だ。


「僕はこころさんを救いたいから。君に近づいた。」


「なんで!砺波くんだって、どうせ私の前から居なくなる!救うって言うなら私の傍から消えないでよ!」


 こころさんから涙がぽつりぽつりをそ落ちていく。だけど僕はその約束は出来ない。


「ごめん。こころさん、それは約束できない。」


「なんで!なんでよ!私の傍にずっと居てくれるだけでいいの、に…」


 そこまで言ってこころさんも気づいてしまったようだ。こうなってしまっては言い逃れはできない。


「僕の命は後持って5ヶ月だからさ。」

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