第17話 絶望
「うぇぇぇ…」
僕はあの後トイレに移動して腹の中の物を吐き出していた。
(なんなんだよあれは)
こころさんが話しかけていたのは人がいないベット、そこにはゆかりさんがいた痕跡は全くなく丁寧にメイキングされた状態だった。
「考えるだけでも気持ち悪くなる。」
つまるところこころさんはこれまでほぼ毎日誰もいないベットに1人話しかけていたということである。
(胸くそ悪いにも程があるだろ。)
「そう思うのが普通だよね。」
そう、俺が絶望しかけてた時、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。
「はは、久しぶりだな。ゆかりさん。」
そう振り返るとそこには最初この病院で会ったこころさんの妹ゆかりさんがいた。
だが、その体は宙に浮かんでいて少し透けていて幽霊のようだった。
(そういうことか)
これで全ての辻褄が合う。なんでこころさんが心を閉ざし1人になろうとしているのか。
「わかってると思うけどあれがお姉ちゃんのホントの姿。私が亡くなったという事実を受け入れきれないから現実逃避をし続けている。」
あぁ、そうだな現に僕はそれに大きなショックを受けている。
「でもお姉ちゃんを助けれるのは貴方だけなの。疾風くん。」
(あぁ、そうだこころさんを助けるのは僕だからな。)
「だからお願い、お姉ちゃんを助けて私たちのヒーロー」
そこまで言われて僕は立ち上がる。
「あぁ、そうだな。僕はこころさんを救う。最初にそう約束したもんな。」
そうして僕はこころさんがいた病室に走るのだった。
◇◆◇
僕が着いた時にはこころさんは既に部屋から出てきていた。
ちなみに僕はトイレに行くと言って部屋を後にしてから15分位立ったのだろうか、でもそのくらいの時間だ。
「ゆかりさんとはもういいの?」
今はまだ僕は知らないふりをする。ここで知っている事にするのは色々とおかしいだろう。
「えぇ、それじゃあ帰りましょうか。」
そうして僕たちは病院を後にする。
通る風が冷たくなってきて夏の終わりを感じれるようになってきた。
(そういや俺らって夏休み何してたっけ?)
毎日チェスをしてお見舞いに行って、チェスをしていつも通りの日々を過ごしてたな。
そんな日々を僕が壊さないといけない。今までの日常を壊さないといけない。それだけが心残りだ。
「砺波君。」
隣から聞きなれた声が聞こえてきた。
「今日楽しかった。また一緒にどこか行来ましょう。」
僕はこころさんの楽しそうな顔に今までの心配など忘れて頷く。
「うん。そうだね。」
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