第16話 デート
電車に乗ってから数十分僕たちは少し離れた街中に来ていた。
「ねぇ、なんで今日はこんなところまで来たの。」
「いや、ちょっとここに遊びに来たかったんだよ。」
とそんなことを言っているが別に深い理由などはない。
いつ見ている近所の風景をゆっくり散歩する。
でも別に良かったわけででもここに来た理由は僕が少し違う景色を見たいと言うだけのものだった。
「ん、そうなの。」
とこころさんは傍から見たら素っ気ない返事に見えるが、彼女を見ると目を輝かせている。
(楽しみなんだろうな。)
そんなことを考えていると、
「ねぇ、私あそこに行きたいんだけどいいかな。」
とこころさんはゲームセンターを指さしていた。
「うん。いいよ。じゃあ行こっか。」
(お金が無くならないようにしないとな)
◇◆◇
「んー!難しい!」
ゲームセンターに入ってから2時間近くがたっていた。
ちなみに今こころさんが挑戦している台はいわゆる三本詰めと言われる大きなクマのぬいぐるみだった。
「変わろっか?」
「いやだ。砺波くん1発でとるから面白くないもん。」
なんだ面白いって、と言ってもたしかに僕は殆どの景品を一発取りしていた。
「じゃあ、あと3回だけだよ。」
「分かった!」
そう言って500円玉を入れるこころさん。
アームが景品を掴んで持ち上げる。少し出口の方に持ってくるがすぐに落としてしまった。
「うぅ、」
(あと少しなんだけどな。)
泣きそうになっているこころさん。可愛い。
でも足がシールドに乗っかっている。多分だが次で取れるだろう。
そしてアームがまた景品を掴んで持ち上げる。今度はアームがしっかり掴んでいて途中で離すことは無さそうだ。
そして、アームが出口の真上に来たところでやっと離す。
取れた!!誰もがそう思った主観悲劇が起こった。
シールドに景品がシールドに引っかかって落ちてこなかったのだ。
「「…………。」」
「行こっか。」
「うん。」
なんとも言えない雰囲気になった僕たちはゲームセンターを後にした。
◇◆◇
「今日は色々と付き合ってくれてありがとう。」
「いいよ。別に元からそういう目的だったじゃんか。」
あの後僕達はショッピングを楽しんで駅前に戻ってきていた。
「あ、そだちょっと病院よっていい?」
「いいよ。」
今日は僕も病室に入っていいとの事。
「ゆかり。お姉ちゃんがお見舞いに来たよ。今日はねお姉ちゃんの友達も来てくれたんだ。」
そんなことを言いながらこころさんはひとつの病室に入っていった。それにつられて僕も病室に入る。だが、そこには衝撃的な映像が流れていた。
「え、」
「砺波くん。私の妹のゆかりだよ。」
なぜならそこにゆかりさんの姿はなかったのだから。
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