第13話 誘拐

「行っちゃった…」


 それにしてもデート、か。デートなんて初めてだからどうしたらいいんだろう。

 いや、違うそうじゃない!早く砺波君を追いかけないきゃ。


「はぁはぁ…。」


 あれから少しの間走ったが元々体力のない私はすぐに疲れてしまった。

 家まではあと少し、歩いて歩いて家に向かっていたら家に入ろうとしてる砺波くんを見つけた。


「砺波くん。」


 私が声をかけたのと同時に黒塗りのワゴン車が横を通っていき、砺波くんを中に連れ込んで行ってしまった。


「……え?」


         ◇◆◇


 なぜこうった。家の着いた僕は鍵を取り出そうとポケットを漁っていた。

 だが、気がついたら僕は車の中だった。

 

(何がどうしたらこんなことになるんだ?)


 もしかして誘拐だろうか。誘拐でお金を払えば済む話だからいいのだ。だが僕の思う問題はそこじゃない。

 僕を拉致してなんの得があるのだろうか。いや、お金が目的ならば得ではあるんだろうがそれなら僕みたいな男ではなくこころさんのような女の子を選んだ方が何かと楽だろう。

 それに僕みたいな金のないやつよりもこころさんのようなTheお嬢様って人を選べばいいだろう…に。

 ここで僕は1つの考えに行き着いた。


(いや、まさか。)


 そんな理由で拉致られたとしたらとんだとばっちりだし僕を拉致ったこいつらの目を疑いたくなる。


「なぁ、ひとつ聞いてもいいか?」


 僕を拉致った男のうちの1人に話をふっかけた。ちなみに男は3人で1人は運転、もう2人は僕のことを挟むようにして座っている。

 

「なんだ。」


 僕の右に座っている男が応えてきた。

 

「なんで僕のことを攫ったりなんてしたんだ。」


「お前らみたいな攫うのになれてそうな奴らが下調べをしないとは考えられない。なのになんで俺を攫ったりなんてしたんだ。」


 そうだ。僕はこころさんの家に居候してるだけでこころさんみたいにお金持ちでもなんでもない。


「そんなの決まってるじゃないか。海外進出もしている大企業の高橋家の者である。お前を人質にしてお金を貰うためだよ。」


 僕の予想通りこころさんの家の前にいたからだった。それにしてもご丁寧に全てを教えてくれた。やはりこいつら馬鹿なのだろうか。


「なんでそんなことを聞くんだ。」


今度は僕の左隣に座ってるやつが聞いてきた。


「そんなの決まってるじゃないか。」


 僕は高橋家に居候しているだけの存在であって決して…


「僕は高橋家の者じゃないってことだ。」

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