第12話 帰途
そして委員長の話から逃げてきた僕は図書室に居た。
「今日は遅かったじゃない。」
そんなことを言ってくるこころさん。たしかに今の時間は昼休みの終わり頃、その為ここまで来るのに生徒とすれ違うことはなかった。
「委員長に話しかけられていたんでな。」
嘘は言っていないそれに僕は次の授業も出るつもりは無い。それは多分こころさんも同じなのだろう。
「そんなこと言ってどうせ前の授業サボったから説教されてたんでしょ。」
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくるこころさん。
(もしかして今僕の心読みました!?)
そんな僕をよそにいつものようにチェスを出し始めるここころさん。
そんな僕もこころさんの向かいの席に座っていた。
「今日も勝たせてもらうわよ。」
「どうだか。」
こころさんの挑発に素っ気なく返す僕だが、今のところの勝敗は94戦75勝19敗と着々とこころさんは腕を上げていた。
(それでもまだまだ雑なところはあるんだけどな)
「あら、そんな事考えてると負けた時の反動が大きくなるじゃない」
微笑を浮かべながら言ってくるこころさんに僕はやっぱり思うのだった
(いきなり心を読むのやめて!!)
◇◆◇
結局あの後僕達は授業には出ず、気が済むまでチェスをしていた。
そして、いつものようにゆかりさんのお見舞いに行って駅前まで来ていた。
(ここしか言うところはないか)
「ねぇ、こころさん。」
「ん?どうしたの?」
「あのさ、土曜日って空いてる?」
デートなんか誘ったことの無い僕は緊張していた。
いや、まじで!まじで1回でもいいから女の子と遊ぶのをバカにするやつは1回でいいからやってみろ!!って言ってやりたい。
「うん。空いてるけどどうして?」
「いやさ、デートとかは?」
「デートね…。は、え。」
こころさんは顔は真っ赤にしてあたふたしていた。
そんな姿に不覚にも僕は可愛いと思ってしまった。
こんな反応をされるとちょっと意地悪をしたくなるものである。
「じゃあ、僕先家に帰ってるから」
「え、あちょっと待って!」
僕は未だに顔を赤くしているこころさんの制止を無視して一足先に帰途を辿るのだった。
この後訪れる悲劇を僕は疎かこころさんも知る由もないのである。
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