第10話 寝坊

 ぼんやりとした意識の中にちゅんちゅんといった鳥のさえずりが聞こえる。

 それと一緒にトントンと階段を上る音も聞こえてきた。


「砺波くん。起きた?」


 どうやらこころさんが起こしに来てくれたらしい。

 だが、今年は例年とい違ってもうすぐ夏だと言うのに寒い。故にベットから降りたくないのだ。


「砺波くん。遅刻するよ。」


(あぁ、近くするのは嫌だな)


 確か、遅刻をしたら色々と面倒なんだった。仕方なく目を開けスマホで時間を見る。

 

「7:46分…。」


「7:46分!?」


 僕たちの学校は9:00スタートだ。そのため時間を見ただけでは一見余裕がありそうだが僕達は学校まで行くのに1時間近くかかる。そして僕は着替えはもちろん何もしていない。


(急がないと!)


 いっその事潔く遅刻してしまおうかとも考えたが僕だらならそれが出来るがこころさんもいる為それをすることは出来ない。

 そして、僕は一種の運動ではないかと思うほどに急いで支度をした。


         ◇◆◇


「ふぁぁ、眠い。」


 今は三時間目やはりこの時間帯は暇になってしまう。そして、暇になるということは眠くなるということでもある。

 

(早く昼にならないかな。)


 昼になればある程度の自由は効く。そうすればこの日まで暇で仕方がない学校もちょっとは耐えられる気がする。


 キーンコーンカーンコーン


「じゃあ、今日はここまで。あ、砺波。終わったら生徒指導室まで来い。」


 授業をしていた担任がいきなりそんなことを言ってきた。


「はい。」


 クラスメイトから視線が僕に向く中僕はクラスを後にするのだった。


(なんでこんな時間に、昼休みにすればいいのに)


 昼休みならば時間はある。弁当を食べる時間が話の内容によってはなくなってしまうかもしれないがこの間の時間で済む話ならばそう長くは無いはずだ。


(なんでこの時間に。)


 僕は移動中もう一度同じことを思うのだった。


         ◇◆◇


「よし、来たな砺波。そんなに長く話す気はない。」


 先生の言う長く話す気はない。は大体嘘だ。守った先生は僕の中では1人2人しかいない。


「それに、そんなに固くならなくていい。それじゃあ本題に入るが、お前体が弱いらしいじゃないか。」


「まぁ、はい。そうですね。」


「だから学校に来てくれてるだけありがい。だが、入院なんかもしていたんだ、無理をして毎日来なくてもいい。休んだっていい。休んだって悪くいう奴はいないと思っている。」


 先生から言われたことは僕にとっては意外な事だった。

確かに話は長いが僕のことを思ってくれてる人がいたというとこが嬉しかった。


「砺波、自分の体を大切にしろ、話は以上だ。」


「は、はい。失礼します。」


 指導室から出た僕はちょっとした優越感に浸っていた。

 今日の昼はいつもより少し美味しくなりそうだ。

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