秘密──③
そのまま、特に探索隊からの連絡もなく待ち続けること数時間。
さすがに暇だ。どれだけ緊張感を持っていても、こんなに長時間待たされるとどうしてもキツい。
横に座るサーシャさんを見る。
……特に変わりはない。ただ真っ直ぐ、ボード森林を見つめているだけ。
「サーシャさん、飽きません?」
「ウチ、待つのは慣れてるから。暗殺もターゲットを確実に殺すためにじっと待つのが基本だし」
生きてる世界が違いすぎる。
『すや……ふみゅ……ぬへへ、こはくぅ〜……』
『クレア、腹を出して寝ていると風邪を引いてしまうぞ』
クレアも暇すぎて爆睡してるじゃないか。
あと
あ、ダメだ。あくび出そう。
「ん……ふあぁ〜……ッ!?」
殺気──!
サーシャさんと一緒に、瞬時にその場から飛び退く。
直後、俺達がいた場所に巨大な鎌のようなものが突き刺さり、大地を深々と抉った。
「こいつはッ、レッドマンティス……!?」
人間はもちろん、時には
体長は2メートルを超え、鎌は鉄鉱石すら切り裂き、パワーも桁外れ。
もし本物なら、外骨格は物理攻撃のほとんどを弾く。
こいつに出会ったら生きては帰れない。
そう言われるほど、レッドマンティスの戦闘力は高い。
そんなレッドマンティスが、森の奥から数十体……いや、100体以上も現れた。
「なるほど、全く気配がなかったねぃ。これがコハク君の言っていた、疑似生命体ってこと?」
「はい、その通りです」
俺らの周りだけじゃなく、トワさん達の方にもレッドマンティスが現れている。
「あらあら〜、活きのいい虫けらですねぇ〜」
「えぇ、俺虫嫌いなんだけど。ダリィ」
「油断するなよザニア。偽物とは言え、奴らの戦闘力は本物並だぞ」
とか言いつつ、トワさん、ザニアさん、コロネさんはパートナーを従え、油断なく周囲を警戒する。
「なるほど。確かに本物そっくりだ。アシュア、ロウン、コル。目の前の敵だけに集中しろ。後ろは任せたぞ」
「はい、マスター」
「おうよ!」
「了解です」
レオンさん、アシュアさん、ロウンさん、コルさんはさすがのチームワークだ。状況を瞬時に判断して、互いに背を向けあって円を組んだ。
『んっ、んん〜……! せっかく気持ちよく眠ってたのに……消し炭にするわよ』
『この程度の相手、コハク様のお手を煩わせるまでもありません。我らにお任せを』
クレアは両手に火球を作り出し、ライガは両手に大剣を構える。
こっちもこっちでやる気満々だな。
「みんなー、がんばえー」
「って、サーシャさんも手伝ってくださいよ」
「ウチは自分の身に危険が及んだ時だけ頑張るから」
ホント、マイペースな人だな。
でもこれ、俺が気を抜いたから現れたんだよな。ちょっと反省。
「「「「「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッァァァァッッ──!!!!」」」」」
っ! 来る……!
巨大な鎌を振り被り、襲いかかって来るレッドマンティス。
本物だったらかなり苦戦を強いられる相手だ。
けど。
「クレア! ライガ!」
『燃え尽きなさい!』
『切り刻む!』
クレアの火球が縦横無尽に動き、レッドマンティスを黒炭に変える。
ライガの目にも止まらぬ剣撃より、周囲にいたレッドマンティスがサイコロ状に崩れ落ちた。
「クルシュちゃ〜ん」
「ガルアアアアアアアッッッ──!!!!」
クルシュがブレスを放ち、十数体のレッドマンティスが跡形もなく蒸発。
「ノワール、ネロ。よろしくー」
「「ガアアアアアアッッッ──!!」」
「アイネ、アネモス、リーフ! 蹴散らせ!」
「「「────」」」
「霊槍レブナント──
「クロイツ流──剣舞」
「魔闘殲滅流──爆殺波!」
「《サンダーボルト・スピア》」
レオンさんから放たれた龍の形をした衝撃波が射抜き。
アシュアさんは舞うような動きで的確に首だけを切断。
ロウンさんが発した強大な魔力球に触れた瞬間爆発し。
コルさんが放った雷槍がレッドマンティスを殲滅する。
瞬く間にレッドマンティスは蹂躙されていった。
まさに圧倒的。みんな、魔族戦から格段に強くなってる。
「おおー、みんな派手だねぇ」
「呑気な……って、サーシャさん後ろ!」
レッドマンティスの生き残りが……!
「んー。こんなに派手だと、みんなアサシンギルドではやって行けないなぁ。やっぱり殺しは──」
「キシャアアアアァァァァ!!!!」
振り下ろした鎌を、まるで後ろに目があるかのようにぬるりと躱し。
ピッ。
風を切るような、妙な音がした。
「キシャアアアルロァノロ……」
次の瞬間、レッドマンティスの首が飛び、静かに絶命した。
「──スマートに。そしてエレガントに、ね?」
……速い。速すぎる。全く見えなかった。
恐らく手刀。でも、今まで見てきたものとは次元が違う。
これがアサシンギルド、ギルドマスター。サーシャさんの力……。
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