真髄──⑥

「フッ……!」

「むンッ!」



 フラガラッハと毒の大剣がぶつかり合い、火花が散る。

 が、僅かな拮抗も直ぐにパワー負けし吹き飛ばされた。


 スピード、パワーは圧倒的に魔族が上。

 それなら、俺は俺のやれることを最大限にやるしかない……!


 宙で一回転して勢いを殺し、フラガラッハを構えなおす。

 同時に、魔族も同じように構えた。



「ふム、ふム。これは■い構えダ。しっ■りくル」

「チッ、面倒だな……!」



 どうする。このままやりあってたらじり貧だ。

 スピードもパワーも上。そして恐らく、スタミナも。

 更に俺には持ってない超猛毒まで吐いてくる始末。


 考えろ、考えろ。そして行動しろ。

 どうすれば奴を倒せるのか、考えるんだ……!


 身体能力は種族の差があり埋められない。

 それなら。


 腰を落とし、重心は下に。

 目は一点を見るのではなく、全体を見渡すように。


 そして、動かない、、、、



「ン? ……ふハッ、そうい■ことカ。自身は攻■に移らズ、防■に徹す■ということカ。浅はかナ」

「俺はお前を倒す。そのためなら何だってやる」

「なるほド。しか■忘れて■ないカ? 我は魔族。近接戦闘以外■も戦う方法はあ■という■とヲ!」



 来る……!


 魔族は思い切り息を吸い――槍を吐き出した。

 超高速で飛来する猛毒の槍。それを【切断】で真っ二つにすると、左右に分かれて背後の壁を抉った。



「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」



 連射……!?


 猛毒の槍に加え、刃や弾が迫ってくる。

 息を止め、ただ目の前に迫ってくる攻撃を避け、弾き、すかし、切り裂いていく。

 だけど……数が、多すぎるッ……!



「ふン!」

「ッ!」



 遠距離の攻撃に混じり、魔族自身が飛んできた……!?


 大剣が頭上から迫ってくる。

 これは受けられない。それなら……。


 離れる。ではなく、踏み込む、、、、



「ムッ!?」



 危険地帯の中にほど、安全地帯は存在する。

 これは剣精霊達との修行で学んだこと。恐怖と引き換えに安全地帯へと踏み込み、活路を見出す……!


【切断】により赤い線を見つけ。

 フラガラッハを振り下ろす!



「はあぁっ!」

「ゴァッ!?」



 まるでスライムを斬るように、赤い線に沿ってフラガラッハが魔族の肉体を通る。

 完璧な一閃。このまま一気に……!






「甘イ」

「ぇっ……!?」






 魔族の肉体を半分まで斬ったのに、突如赤い線が消えた。

 ぐっ……なっ、刃が振り抜けない……!?


 まるで硬質な岩石に挟まれたように動かなくなるフラガラッハ。

 これっ、まずい……!


 直感でフラガラッハから手を放し、瞬時に魔族から距離を取る。

 次の瞬間、俺がいた場所に魔族の剛腕が振り下ろされ、深いクレーターを作った。



「ふム、い■判断ダ」



 自身に刺さっているフラガラッハを引き抜く。

 すると、見る見るうちに傷が塞がり、全快した。


 半分以上斬られたのに、もう回復するなんて……凄まじいを通り越して、もはや気持ち悪いな。

 だけど……まずい。フラガラッハは奴の手だ。俺のミスとは言え、武器を手放すなんて。



「ほうほ■。こ■が人間の刀匠が作った剣カ。どレ」



 魔族はフラガラッハを足元に落とすと……ぁ、やめ──。



「ふンッ!!」



 全力で振り下ろされた拳がフラガラッハに打ち込まれた。

 土煙が上がり、轟音が渓谷を反射する。


 こ、これじゃあ……!



「お、お前えええええええええええ!!」

「落ち着■人間。こ■つを見ロ」



 え? ……んなっ。



「お、折れて、ない……?」



 クレーターの中心に横たわるフラガラッハは、あれだけの剛力で殴られたのに傷ひとつついていない。それどころか歪みもない。


 今までフラガラッハを使って来たけど、こんなに頑丈だったのか、こいつ。



「よい剣ダ。刀匠に恵ま■たナ」



 と、フラガラッハを投げ渡してきた魔族。

 ……なんで素直に返したんだ? 罠か?


 警戒して剣を取らないようにしていると、魔族は大剣を構えなおした。



「我が欲す■は力のミ。力無き貴様に勝ったところデ、意味はなイ。貴様の真価は剣を持って発揮されル」



 ……なるほど。つまりこいつは、今の俺が実力の全てだと思ってるわけか。


 確かに今のままの俺なら、これが実力の全てだ。

 俺のままでこいつに勝てる可能性は低い。いや、はっきり言えば、このままじゃじり貧で、殺されるのは目に見えてる。


 何故かはわからないが、フラガラッハも止められた。フラガラッハの【切断】も効かないとなると、勝ち目はない。


 でも、これが俺の実力じゃない。

 俺の真価は剣術ではない。


 俺は……テイマーだ。



「魔族。勘違いしているみたいだから、ひとつ言わせてもらうぞ。俺は剣士じゃない。そして、これが俺の実力じゃない」

「……なニ? 何を言っ■いル」



 今、見せてやるよ。


 テイマーの真髄を。



「来い、剣神ライガ──!」

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