真髄──⑤
とにかく今の攻防でわかったのは、俺の剣技は理性を失った魔族相手にも通用する。
もし魔族の中に超達人級の剣士がいたらまずいけど……それでも、この程度の相手ならいける。
魔族が大剣を放り投げると、一瞬で液体に変わった。
なるほど、体から離れた毒の武器は、形を保ってられないのか。
人間相手に手こずっていることに苛立っているのか、魔族は更に肉体を膨らませた。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
来るッ!
まばたきすら許さないスピードで迫ってくる魔族。
スピードも、パワーも、さっきとは比にならないほど速いし強い。
本来筋肉は、大きくなればなるほどスピードが弱まる。
けど、魔族にはそんな常識も通用しないみたいだな……!
全ての感覚を研ぎ澄ませろ。
“見る”のではなく“視ろ”。
全神経を奴に集中する──!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
避けて避けて避けて避けて弾いて逸らして避けて弾いて弾いて逸らして逸らして避けて──反撃するッ!
「■■■■■!?」
こいつらの回復にはラグがある。
なら、ガードできないように爪を、角を、翼を、四肢を斬り飛ばすッ!
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!」
そしてガラ空きになった首……ここ!
フラガラッハを滑らせるように魔族の首へと振るい──。
「なっ!?」
「■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!」
ッ、しまっ──。
自分でも認識できるほどの一瞬の硬直。
その隙をつかれ、地面に叩き付けられた。
「カハッ……!?」
上空から落下し、地面に叩き付けられたような感覚。
喉の奥から熱いものが込み上げ、我慢できず鮮血を吐き散らす。
その直後に痛みが全身を襲い、動こうにもコントロールが利かない。
これ、まずい……!
動けッ、動けッ、動けッ──!
「ハァ、ハァ……キサ■、中々や■ナ」
既に斬り飛ばした箇所が回復した魔族が、息も絶え絶えに口を開いた。
聞きづらいが……この言葉、人の言葉だ。
「回復ヲ右■に集中さ■なけれバ、あそこデ倒■れていた■ろウ。久々ニ、死を覚悟し■ゾ」
くっ、そういうことか。だからあそこまで回復が早く……!
「……な、ぜ……とどめを刺さないッ……!」
「……さァ、何故だろ■ナ。気まぐれダ」
魔族が口から毒液を吐き、さっきと同じ毒の大剣を創り出した。
「人間に聞ク。キサマ、剣士で■ないナ」
「……俺は、テイマーだ」
「テイマー……魔物■使役すル人間の総称カ。剣士でな■人間がこ■まで剣を使うとハ……面白イ」
魔族の口角が上がり、大剣を俺に向けてきた。
「立テ、人間。毒は既に限界ま■食っタ。後は技……キサ■の剣の腕を吸収シ、我は更な■高みへと行ク」
チッ。さっきまで暴走気味だったのに、冷静になってる。
この手の相手は、冷静になって頭を働かせた方が強い。
スピードもパワーも俺以上。回復力も怪物で、更に毒の武器を創り出す。
対して俺が奴に勝っているのは、我流の剣技と五感と第六感をフルに使った危機察知能力。
奴が俺の危機察知能力を覚える前に倒し切らないと、間違いなく殺られる──!
立ち上がり、フラガラッハを構える。
考えろ。考えろ。考えろ。
剣精霊との修行も、常に頭をフル回転させていた。
フル回転させた思考を自分自身のものにするべく、全身の感覚を研ぎ澄ませた。
……同じだ。
いつもと同じ。いつもやっている事を、今もやるだけ。
魔族を殺す。殺すためにどうするか、考える。
「……いい殺気ダ。よもや人■がこのよ■な目をしてくるとハ」
魔族も大剣を構える。
俺を真似てるのか、同じ構えで。
「真似、するじゃねーよ!」
「技の吸収は模倣■ら始まル」
さっきまで獣みたいに怒り狂ってたやつが、何まともなこと言ってやがる。
とにかく、こいつが俺の技を吸収する前に倒しきる。それしかない。
全身の力を弛緩させ──直後に緊張。
爆発的な力を元に、魔族へと迫った。
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