真髄──⑦

 直後、大気中の毒素が全て斬り裂かれた、、、、、、


 感覚でわかる。

 俺を中心にした半径3キロの毒素が、今の斬撃で浄化された。


 斬撃で空気を浄化する。

 そんなの、ライガの主である俺でも聞いたことがない。



「……ハ……?」



 魔族も異変に気付いたらしく、今までに見たことのないまぬけヅラを晒す。


 わかる、わかるよ、その気持ち。

 意味わかんないよね。俺も意味わかんないもん。


 やっぱり幻獣種ファンタズマはバケモンだ。


 空気を斬り裂いた張本人は、魔族をも超える圧倒的な存在感を放ちつつ、ゆっくりと降りてきた。


 俺の前に跪き、剣を地面に突き刺す。



『コハク様。お見事な戦いっぷりでした』

「お世辞はいいよ。……ごめん。1人で倒せなかった」

『いえ。あの魔族の力は、並の魔族を遥かに超えています。あのままでは、恐らくコハク様が負けておられたでしょう。私を召喚したのは、賢明な判断かと』

「は、ハッキリ言うね」

『お隠しした所で、コハク様の為になりませんから』



 むぅ。


 ライガはゆらりと立ち上がり、剣を引き抜く。

 そこにいるだけなのに、空気が歪み、震えていた。



『さて、魔族よ。──死ぬ準備はできているか?』



 ゴオオォォォォッッッ──!!!!


 うぐっ……! 凄い圧だ……!



「な、なんダッ。そこに誰■いるのカ……!?」

「ああ。と言っても、お前には見ることすらできないけどね」

「……何ダ? 何を言っていル。見え■い、だト?」






「俺は、幻獣種ファンタズマテイマーだ」

「………………………………はイ?」






 ま、いきなり言われても信じられないよな。こんなリアクションも久々だ。



「何ヲ……何を馬鹿■ことヲォ!!」



 俺の言ってることが世迷言だと思ったのか、俺に向かい毒の刃を吐く。


 が、それもライガの一刀のもとに霧散した。


 俺は何も動いていない。

 それなのに、俺に触れる直前に霧散したのだ。幻獣種ファンタズマを見えない魔族からしたら、意味がわからないだろう。


 それにしても……毒の刃を真っ二つにするのではなく、霧散させる。

 俺にはできない芸当だ。……やっぱりとんでもないね、幻獣種ファンタズマは。



「……それじゃ、見せてあげるよ。テイマーとしての俺の真髄を」



 ライガが俺の背に周り、肩に手を置く。

 同時に、俺とライガを暖かな光が包み込んだ。

 荒々しく、燃えるような熱い魂を感じる。

 

 これがライガの魂……これと同化したら、どうなるんだ。



「クッ! ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!」



 魔族がむやみやたらに毒の刃や槍を吐き出す。

 しかし、それは俺達を包む光によって弾かれた。


 なるほど。魔人化の最中は、相手の攻撃は俺達に届かないようになってるのか。

 これはいいことを知った。


 なら、心置きなく。



「行くよ、ライガ」

『はい、コハク様』

「『“魔人化”』」



 光が膨張し、一気に圧縮される。

 俺とライガの肉体と魂が溶け、混じりあっていく。


 直後、光が暴風と共に弾け──俺とライガの体は、融合した。


 全身を覆う漆黒の鎧。

 前髪から察するに、髪は炎髪。そして恐らく瞳も緋色。

 右腰に両刃剣。左腰に太刀。背中には大剣。

 しかし、右手にはしっかりとフラガラッハが握られている。


 これがライガとの魔人化……すごい。頭の中に、俺の知らない剣術の知識が雪崩のように入ってくるみたいだ。



「……待たせたな。これが俺の力だ」

「……力? それガ、貴様の力だト……? 他者の力を借■テ、何が力ダ!」

「何を言っているんだ? 俺はテイマー。テイムしてる使い魔の力を使うのは、当然だろう」



 軽く、フラガラッハを振るう。

 無造作に振り払っただけなのに、周囲の空気を吹き飛ばす暴風となった。


 やっぱり魔人化の力は慣れない。

 これからも使っていって、力に慣れていかないとな。



「……悪いけど、この力はそんなに長く続かないんだ。……最速で行かせてもらう」

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