絶海の孤島──③
◆
テイマーとして強くなるためには、まずは俺自身が強くならなきゃならない。
そう思い、剣の里へ向かう道中の魔物はできるだけ俺が討伐すると息巻いたはいいが。
「いやいやいや無理無理無理!」
目の前に立ちはだかるのは、十数体の
ザニアさんの使役している黒獅子ではなく、それよりもランクの低い
大きさはフェンリルほどではない。
しかしスフィア曰く獰猛さと狡猾さは魔物界随一らしく、
そんな超危険な魔物が、十数体……。
『『『ガルルルルルルル……!!』』』
めっちゃ威嚇してきてるよぅ……!
「ちょっ、これは流石に無理でしょ……!」
『ご安心をご主人様。私が剣士の力を
これってそんなのでどうにかなる問題かな!?
スフィアが《
それでもやっぱり、こんな十数体の赤狼を前には心もとなさ過ぎる……!
『コハク、安心しなさい。もしもの時は私達がしっかりフォローするわ』
『そうです。ご主人様はまず、ご自身が戦闘に慣れていただく必要があります。ギリギリまで手は出しませんが、後ろには私達がいます。ご安心を』
『コゥのかっこいーとこ見てみたい!』
くぅ! やるよ! 俺自身がやるって言ったし、そりゃやるさ!
でもいきなり
背後の
それも時間の問題だ。
襲ってこない間に、魔法剣フラガラッハの能力、【切断】を発動させる。
赤狼の体に赤い線が浮かび上がる。
体毛が赤くても、【切断】の線ははっきりと見えるみたいだ。
その気配を感じ取ったのか一際大きな赤狼の体毛が逆立ち、遠吠えを上げた。
恐らくこいつがリーダーなのだろう。
それを合図に、十数体の赤狼が一斉に襲い掛かってきた──!
「ぐっ……!」
速すぎ――!?
巨大な爪、牙をギリギリで回避する。
が、そこに更に別の赤狼が襲い掛かってくる。
「チィッ……!」
剣士の技能を付与されて動体視力と身体能力は上がっているとは言え、今の俺は一般人に毛の生えたレベルの素人も同然。
回避するだけで精一杯で、攻撃に移れない……!
『コゥ、そこ! そこ!』
『コハク、後ろから来るわよ!』
『ご主人様、ファイトです』
君達余裕そうに紅茶飲んでますね!?
「こんにゃろ!」
ダメもとでフラガラッハを振るう。
だが赤狼達には余裕をもって回避された。
やっぱり俺の身体能力より、こいつらの身体能力の方が格段に高いなっ。
だが警戒心は高いのか、俺がフラガラッハを振るったことで僅かに距離ができ、俺を取り囲むように円になった。
落ち着け。落ち着くんだ。ここで冷静さを欠いたら、強くなんてなれやしない。
呼吸を整えて、相手をよく見ろ……!
赤狼の体はでかい。
つまり、複数で襲い掛かってきても1度の攻撃は1体。多くても前後、左右の2体。
態勢を整えて。
相手の動き、コンビネーションを見極めろ……!
『ウオオオオオーーーンッッッ!!!!』
『『『ガルアアアアアアアッッッ!!』』』
来る!
リーダー格の赤狼の遠吠えと、部下達の咆哮と共に再び襲いかかって来た。
先頭にいる1匹が、単体で牙を剥く。
「フッ──!」
息を短く吐き、ギリギリの所で攻撃を回避。
すれ違うと同時に、フラガラッハを線に沿わせるように振るうと──抵抗も何もなく、真っ二つになり絶命した。
『『『ガッ──!?』』』
まさか俺程度にやられるとは思わなかったのか、赤狼達は二の足を踏んだ。
よし、いいぞっ。このまま──。
『ガルアッ!』
『『『ガルッ!』』』
リーダー格が頭をクイッと動かすと、部下達は大きく口を開けた。
直後、全員の口元に深紅の魔法陣が浮かび上がり……って!?
「魔法!?」
『『『『『ガアアアッッッ!!』』』』』
目の前に現れる巨大な業火。
しまった、油断した──!
『安心しなさい、コハク』
「クレア……!」
いつの間にか俺の肩に乗っていたクレア。
彼女が手を伸ばし、指を弾く。
瞬間、業火の全てが掻き消え、視界が開けた。
『『『ガルァッ!?』』』
『コハク、今よ!』
「ああ!」
動きの止まった近くの赤狼に肉薄し、一気に3体の赤狼を斬り裂いた。
止まるなっ、攻め続けろ!
更に2体の赤狼を斬り伏せると、リーダー格は我に返ったのか遠吠えを上げ、群れを連れて退散した。
「…………ぶはっ! し、死ぬかと思った……」
『全く。油断しすぎよ、コハク』
「面目ない……」
まさか魔法を使ってくるなんて……クレアがいなかったら丸焦げだった。
あんなのがゴロゴロいるのか、この大陸には……。
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