絶海の孤島──②

「──何これ?」

『カマドウマですね』

「それはわかる。わかるが……でかすぎね?」



 絶海の孤島大陸、最初にエンカウントした相手。

 昆虫種インセクトの中でもよく思われない不快害虫の1つ、カマドウマだ。


 カマドウマの種類は多く、数十から数百の種類がいると言われるが……。



「フェンを遥かに凌ぐでかさのカマドウマとか、気持ち悪すぎんだけど!?」

『────』



 不快な鳴き声を上げ、天高く跳躍する巨大カマドウマ。

 明らかに俺達をエサとして見ているようで、無数の牙が生える口を大きく開いた。



『ご主人様、人間界では新種の魔物ですよ。捕まえますか?』

「いらん! いらんいらんいらん!」



 あんな巨大なカマドウマ、捕まえたところで連れて帰れないし、そもそも不快すぎて吐き気もする!



『畏まりました』



 スフィアが巨大カマドウマに手の平を向ける。

 直後、スフィアの腕からモーター音が響き、手の平に青白い光と超高熱の何かが凝縮し始めた。


 こ、これは……熱すぎる……!



『クレア』

『はいはい、わかってるわよ』



 クレアが指を弾く。

 と……おぉっ、熱さがなくなった。



「ありがとう、クレア。助かったよ」

『ふふん、もっと褒めていいのよ!』



 いや、褒めてもいいけどまだカマドウマがこっちに来てるんですが!


 スフィアの手に集中する光が、より一層強さを増す。

 甲高い音が周囲に響き渡り、そして。



『ご主人様を不快にさせた罪、万死に値する。……爆ぜなさい、害虫。《ソーラーレーザー》』



 大気を揺るがす轟音と共に、白い光が放たれた──!


 視界を白く覆う眩いばかりの光と、耳をつんざく爆音が周囲に撒き散らされる。



「おっ! おおおおおおおっ!?」



 クレアとスフィアのおかげで俺に被害がないとわかっているが、それでも反射的に頭を腕で覆って守るように身をかがめた。


 極大の破壊力を持つそれが放たれて数秒。

 ようやく光も音も止んだ。

 ゆっくりと目を開け、上空を見上げる。

 さっきまでそこにいたカマドウマの新種は跡形もなく消え、僅かに残った脚だけが俺達の近くに落下した。



「……すげぇ……何、今の?」

『《ソーラーレーザー》と言う、太陽光をエネルギーに変換し圧縮、放出する武器です。今はあの程度なので威力は抑えていますが、本気を出せば大陸に大穴を空けることもできます』



 こっっっわ。何それ超怖いじゃん。

 幻獣種ファンタズマの力を改めて見ると……なるほど、確かにこの大陸くらいデカい場所じゃないと、うかうか本気も出せないんだな。


 俺の背丈程もあるカマドウマの脚を、念の為スフィアに回収してもらう。

 新種って言ってたし、持っておいて損はないだろう。


 そこから更に歩みを進める。

 大草原にはさっきのカマドウマみたいに、見たこともない魔物がうようよいた。


 昆虫種インセクト獣種ビースト自然種ナチュラル妖精種フェアリー獣王種キング龍種ドラゴン……とにかく色々な魔物が生息してるな。



「見たことない魔物ばかりだ……」

『当然よ。この孤島で独自の進化を遂げた魔物しかいないもの。当然、外の魔物より強い魔物ばっかりよ』



 クレアが自慢げに話す。

 確かに、1匹1匹の醸し出す強者のオーラが半端じゃない。



「でも、何でこの大陸の魔物は外より強いの?」

『ご主人様。ここは外よりも多くの龍種ドラゴン獣王種キングが生息しています。弱い魔物は彼らに捕食される……だから強く進化するしかなかったのです』



 なるほど。

 こうして見渡すと……確かに普通のゴブリンやスライムと同じ感覚で、龍種ドラゴン獣王種キングがいる。

 こんな所じゃ、眠るのも神経をすり減らしそうだ。



『コゥ。ここならコゥも修行して強くなれるよ!』

「うん……そうだね。俺のテイマーとしての力も上げられるし、何より魔人化、魔融合、魔変身の訓練もできそうだ」



 トワさん、コロネさん、ザニアさんのようにとはいかないけど、あの人達のように俺も皆と一緒に戦いたい。


 そのためにも、まずは剣の里に行って剣神ライガと契約して力を得る。

 それからテイマーとしての戦い方を学んでいく。


 やることは沢山ある。

 それでも魔王討伐のためなら、やってやるぞ……!

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