VS魔族──⑥

   ◆



 場所は変わってバトルギルド、ギルドマスター室。

 魔族を消滅させた俺達は、喜びを分かち合うわけでもなく沈痛な面持ちで集まっていた。


 理由は勿論、さっきの魔族が残した言葉。


 七魔極とかいう、7人の魔王の側近。

 テイマーギルドの最高峰とバトルギルドの最高峰でも、そいつらには勝てない、か。


 そりゃ、言葉も空気も重くなるわ。


 そんな中、面倒くさそうに鼻をほじくっていたザニアさんが口を開いた。



「七魔極ねぇ。ホントにそんな奴いんのか?」

「わからんな……コハク、何かわからんか?」

「あ、はい。少々お待ちを」



 待機しているスフィアに目を向けると、小さく頷いた。



『あの魔族の言う通り、七魔極は存在します。当時の強さと皆さんの強さを比較すると……やり合えるのは《剣聖の加護》を発動したアシュア様、魔人化したトワ様くらいでしょうか』



 やっぱりいるんだなぁ……。

 しかもアシュアさんとトワさんの本気で、ようやくやり合える程度……。


 そのことを嘘偽りなく伝える。

 こんな所で嘘をついても仕方ないから。


 だけど案の定……場はもっと暗くなった。



「クソッ! 俺達じゃ足でまといってのか!」

「そうですっ、万端に準備をすれば……!」

「ロウン、コル。やめておけ」



 激昂するロウンさんとコルさん。

 それを、レオンさんが手を挙げて止めた。



「確かにあの時のアシュアとトワは、このメンバーの中では抜きん出た強さだった。認めるしかない」

「おやぁ〜? 私の方が上だと認めましたかぁ〜?」

「あ? 誰がいつそう言った」



 こんな時まで喧嘩するんじゃありません。



「とにかくだ。今日の魔族だって、コハクの使い魔が俺達を守ってくれなければ何人死んでいたかわからない。俺達は、早急に強くなる必要がある」



 レオンさんの言葉に、真っ先にコロネさんが頷いた。



「うむ。レオン殿の言う通りだ。ザニア、私に付き合え。特訓だ」

「パス」

「毛根を死滅させられるのとどっちがいい」

「ナチュラルに酷いこと言わないでよ。ったく、わーった、わかりましたー」



 アシュアさん達も、特訓について話し合っている。

 これ、俺達もうかうかしてられないな。



「コハクさん、どこ行くんですかぁ〜?」

「あ、はい。俺も強くなろうかと」

「……これ以上強く、ですか?」

「まあ、皆さんの戦い方を見ていたら……じっとしていられません」



 そう、俺にはトワさんみたいな魔人化も。

 コロネさんみたいな魔融合も。

 ザニアさんみたいな魔変身もない。


 ただ、みんなの力に甘えているだけ。


 せっかく伝説の幻獣種ファンタズマを使役してるんだ。

 みんなに甘えてるだけじゃなく……俺も、トワさん達みたいに戦いたい。



「なるほど〜。気を付けてくださいね〜。何かあったら、私の使役するミニ龍種ドラゴンを使って連絡します〜」

「わかりました」



 この場にいる皆に軽く挨拶をし、バトギルドを出るとフェンリルに乗って空を翔けた。



『コハク、どこに向かうの?』

「うん。せっかくフラガラッハを手に入れて《技能付与エンチャント》で剣技を使えても、俺自身は弱いままだ。だからまずは、剣神ライガと契約するために剣の里に向かう」



 ライガは、俺こそが魔王を討てる可能性があると言っていた。

 そして今日の戦い。

 みんながどれだけ強くても、魔王どころか七魔極にすら及ばないことがわかった。


 そして現状、俺の力はみんなに遠く及ばない。


 それならテイマーとしての実力も、俺自身の力も上げないと、到底魔王に勝つことはできない。


 魔王を倒すため……俺は強くなる。



「スフィア、剣の里はどこにあるの?」

『はい。剣の里はアレクスの街から更に東……未だ人類の到達していない絶海の孤島に存在します』

「わかった。フェン、いける?」

『もちろん! もちろん!』



 フェンリルの空を翔けるスピードがぐんと上がる。

 眼下に見える大地が大海に変わり、剣の里へ向かい進んで行った。






『因みにこのまま行くと丸1日かかります』

「それ先に言おうね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る