VS魔族──⑤
「チィ──!」
「ぐぉっ!?」
なっ! あの状態でロウンさんを押し返した!?
大きく翼を広げる魔族。同時に上空に向かって羽ばたき、巨大な腕を振るって防御シールドにヒビを入れた。
『逃げる気よ!』
『逃がさない! 逃がさない!』
フェンリルが空中を駆け、魔族に肉薄。
魔族も殺気を探知したのかフェンリルの爪をすんでのところで回避。再度防御シールドに攻撃し、ヒビを広げた。
「《ブリザード・キャノン》!」
コルさんの氷魔術。
だがそれも、翼を使って弾き飛ばされた。
まずいっ、このままじゃ──!
「ロウン、俺を飛ばせ!」
「行くぜマスター!」
ロウンさんが手を組み、レオンさんがそこに足を乗せ……上空に向けて飛ばした。
「霊槍レブナント──螺旋無限突き!」
体を回転させ、螺旋状に槍を突くレオンさん。
だが。
「待っていたぞ、貴様の攻撃を──!」
「ッ!」
魔族が脇目も振らず離脱。
直後、レオンさんの槍が……ヒビを入れていた防御シールドを粉々に砕いた。
「ふはははは! 見誤ったな
ワォ、小物感。
「ぁっ……!」
「しまった!」
『逃がしませんよぉ〜』
トワさんも翼を羽ばたかせ魔族に向かって飛翔する。
だが時すでに遅し。
魔族は砕かれた防御シールドの穴から、大空へ向かって飛び出し──。
ゴスッッッッッ──!!!!!!
見えない壁に頭を盛大に打ち付けた。
「ぇっ……がっ……!?」
「あー、悪い。……いつからシールドが1枚だと錯覚していた?」
真っ逆さまに落下してくる魔族。
トワさんは魔族の首根っこを掴むと、地面に向けて思い切り叩き付けた──。
「ゲハッ!?!?!?」
『あと4回です』
叩き付けで1回殺すって、どんなパワーだ、トワさん。
「ぐ、ぐそっ……クソォァ……!」
「俺達から逃げたければ、あと49枚頑張れよ」
「……貴様が……貴様がいなければァァァ!!!!」
ま、そうなると俺の方を狙ってくるよなぁ。
「クレア」
『ええ』
クレアが魔族に指を向ける。
僅かに赤く光る指先。次の瞬間……魔族は目を見開き、崩れるようにもがき苦しんだ。
目から血を流し、全身を掻きむしって悶えている。
「あがっ……けっ……ぉ……!?」
「魔族は無駄に頑丈だから死にづらいとは思うが……血管の中の血液が沸騰する気分はどうだ?」
「ぁ……ぉ……」
ぱたり。死んだか。
『ご主人様、あと3回です』
「オーケー。フェン」
『あーい!』
フェンリルが、再びもぞもぞと動き出した魔族へ向けて突進する。
『あーそーぼ!』
「へぼっ!」
フェンリルの爪が起き上がった魔族の腹に食い込み、吹き飛ばす。
吹き飛ばされた魔族より更に高速で回り込み、吹き飛ばす。
吹き飛ばす。
吹き飛ばす。
吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。吹き飛ばす。
『ご主人様、あと1回です』
「わかった。フェン、戻ってきて」
『あーい!』
俺の背後に戻ってきて、尻尾をぶんぶん振り回すフェンリル。あとでめいっぱい褒めてやろう。
「ぁ……ぅ……だ……だずげ、で……だずげでぐだざぃ……! しに……死にだぐ、なぃ……!」
『うるさいですよ不快害虫。ご主人様の前に跪きなさい』
「ほぐっ!?」
スフィアのパワーで、両手両足と翼を封じられた魔族が俺の前に頭を垂れる。
「最後に言い残すことは?」
「ぐ……ぞっ……! 死ね!」
『無駄よ』
俺に襲いかかってくる黒死炎。
だがそれも、クレアの前に掻き消された。
「俺には最高の使い魔達がいる。お前の攻撃は、俺には届かない」
「……く……くくく……くくくくくっ。よ、よぉくわかった……ここにいる全員の力も、よく分かった……」
……何が言いたいんだ、こいつは。
……まあいい。終わらせてやる。
フラガラッハを構え、目を凝らす。
赤い線が首に浮かび上がり、そこにフラガラッハを突きつけた。
「お前らは強い……それは間違いないが、それでもあの方々には遠く及ばん」
「……あの方々?」
「……魔王様。そして魔王様に傅く7人の魔族……七魔極。彼らには勝てん。貴様ら程度ではな……ふ、ふふ……ふはははは──」
スパッ──!
力を込め、魔族の最後の命を斬り飛ばす。
直後……魔族の体は音もなく崩れていき、最後は灰だけが残された。
七魔極……面倒なもん聞いちまったなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます