「たいあっぷ」してみた結果

 株式会社トレンダーズ様が主宰されている新しい小説×イラスト投稿サイト「たいあっぷ」さんにつきまして、6/7 に閲覧ページの公開とオープニングコンテストが開催されましたので再度筆を執らせて頂きました。元々は公開と同時に執筆しようと考えていたのですが、多忙につき随分と時間が空いてしまいましたこと、何卒ご容赦ください。


 また、遅ればせながら閲覧ページの公開とコンテストの開催、おめでとうございます。こうして作家とイラストレーターが協力して作品を制作する場を与えて頂いたことに深く感謝申し上げます。


 さて、本コラムでは筆者がどのようにしてたいあっぷし、どのように作業を進めていたのか、そしてたいあっぷさんの良いところを共有したいと思います。


 今後たいあっぷさんをお使いになる皆様におかれましては一つの目安として頂き、こういった知見が積み重なってより良い共通の指針が得られるきっかけとなればと思います。


 本コラムは以下の構成となっております。


1.マッチングするまで

2.実際にどうやって作業をしたか

3.たいあっぷをやって良かったこと

4.最後に


 それでは本論に移りたいと思います。


1.マッチングするまで


 今回のオープニングコンテストに私は「テイマー少女の逃亡日記」と「勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中」の二作品をエントリーしております。


 筆者の場合、大変ありがたいことに両作品ともイラストレーターの先生よりお声がけを頂いての参加となりました。


 筆者からはあまり積極的にお声掛けをしなかったわけですが、本コラムではどうして申請をお受けしたのかについてご説明いたします。お声がけしなかった理由につきましては前回のコラムでお書きしておりますので、そちらをご参照ください。


 まず、筆者は以下の二つの条件を事前に確認し、ご承諾頂きました。


①他サイトでのイラストの使用が可能なこと

②他で書籍化が決まった場合に最後まで同道してもらえること


 まず①についてですが、筆者はたいあっぷさんではなくここカクヨムさんを含む他の小説投稿サイトでの活動をメインにおいています。そのため、たいあっぷさんのみでしかイラストを使えないという状況はかなり不便なためこの条件をつけさせ得ていただきました。


 といっても、この条件はイラストレーターの先生にとっても露出の増加に繋がりますので悪い条件ではないと考えていました。そのため嫌がるイラストレーターの先生はそれほど多くはないと想定しておりましたが、トラブルを避けるためにも事前にご承諾頂きました。

 なお、こちらの取り決めに従い、現在表紙絵のみを各サイトと SNS 上での宣伝用に使用させて頂いております。


 ②につきましては、前回のコラムでも申し上げましたたとおりどちらの作品も他のサイトで書籍化する可能性が完全にゼロとまでは言えません。そしてもし仮に書籍化の運びとなった場合、出版社で契約する場合とたいあっぷさんで契約する場合とでは条件が大きく異なってしまいます。

 筆者は書籍化の話を頂いたならばそちらを優先するつもりですが、だからといって「はいさようなら」とイラストレーターの先生を切り捨てるのは良心の呵責に耐えられそうにありませんでした。

 そこで、書籍化して条件が変わったとしても最後までお付き合い頂ける覚悟のある先生とのみタッグを組んでやっていきたいと思っていました。


 また上記の関係上、大変僭越ながら筆者は打診をいただいた際に pixiv と Tiwiter を拝見し、この先生のイラストであれば書店において他の書籍と並んでいても見劣りしないと確信できた場合にのみお受けすると決めていました。


 実際「テイマー少女の逃亡日記」をご担当いただいたアルパ閣下先生 ( @AlpakakkaX2 ) 、「勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中」をご担当いただいた紅白法師先生 ( @akashiroboushi9 ) は共に大変すばらしいイラストを描いてらっしゃり、もちろん今回描いて頂いたイラストはどれも最高のクオリティでした。


 ご興味を持たれた読者の皆様におかれましては、是非とも両先生の Twitter をチェックいただき、その素敵な世界をご堪能いただければと思います。


2.実際にどうやって作業をしたか

2-1.利用した機能について


 たいあっぷさんには作家とイラストレーターの先生が共同で作業するための場として「エディタ」の他に「チャットルーム」と「共有メモ」、「キャラリスト」という機能が用意されています。


 ですが筆者たちは「チャットルーム」のみを利用し、他の機能は一切利用しませんでした。もちろん、入稿作業にはエディタを利用しましたが……。


 では何を使ったのかというと、設定などのデータの共有には Google Spreadsheet を利用し、原稿の執筆を Google Docs を利用しました。


 筆者が使い慣れているからということもありますが、他にも三つの理由がありました。


 まず一つ目は、「キャラリスト」が人間のみを想定していたためです。「テイマー少女の逃亡日記」は主要登場キャラクターにスライムやもふもふの猫や鳥が登場します。そのため、完全に用途に合わないものを無理して利用する必要性を感じませんでした。また、「キャラリスト」と「共有メモ」を使うと見なければいけないページが増加していくため、確認用の資料が分散することにもつながります。いちいちページを開いて探す手間を省くためにも、 Google Spreadsheet でまとめて設定を共有して作業を進めました。


 また、もう一点は公開したばかりのサービスにデータを預けることが不安だったという点が挙げられます。

 こういったWebサービスは運用しながらバージョンアップを重ねていくものですので、その際に思わぬ事故が発生する可能性があります。

 2012 年に、ソフトバンク株式会社の100%子会社だったファーストサーバーというレンタルサーバー会社が事故でデータを全て消失するという大事件を起こしたことがありました。

 そのようなIT企業の子会社でサーバーの管理を専門にやっていた会社でも事故が起こるのですから、できたてほやほやのサービスに全てを預けるという選択肢は筆者には最初からありませんでした。

 たいあっぷさんでデータが消失するという事故が発生したのかどうかは存じ上げておりませんが、サーバーの停止という事態には何度か見舞われました。

 その間、たいあっぷさんにデータがあると作業が進められなくなりますが、Google を利用していたおかげでその間も問題なく作業を進めることができ、無事に作品を公開することができました。


 最後はの理由は、Google Docs の「編集を提案する」という機能を利用したかったからです。

 この機能を使うと、「いつ」「誰が」「どんな編集を提案し」「どう解決したのか」をすべて Google Docs 上で行うことができます。あの Google 社が長年かけて開発しているサービスなだけあって、エディタとしての完成度はたいあっぷさんのものとは比較になりません。

 とはいえ、これについてはさすがに比べるのは酷かもしれませんが。


2-2.実際の作業について


 前述のとおり Google 社のサービスを利用し、やりとりだけをチャットルームで行うという形で作業は進行していきました。


 作業の詳細は編集さんがいないということ以外は基本的に書籍を出版する際の作業と変わりませんので大筋は割愛させていただき、違った部分についてのみご説明いたします。

 まずは挿絵についてですが、今回出品した作品はどちらもたいあっぷさん以外で公開している作品です。そこで、すでにお読みいただいている読者の皆様に感想で見たい挿絵のシーンの募集を行いました。

 もちろん意図をもって挿絵を入れる場面もありますので全て読者様のご要望にお応えしたわけではありませんが、両作品とも読者様のご要望を取り入れることができました。

 他にも、筆者と両先生でどのシーンの挿絵を入れたいかというアイデア出しを行い、話し合いで挿絵の位置や構図を決定していきました。

 手探りではありましたが、特に揉めるということもなく挿絵のシーンを決めることができました。これはお二人の先生のお人柄による部分も大きかったのではないかと思っております。


 また、文章の校正をイラストレーターの先生にお願いしたというのも出版社から書籍化する場合との違いではないかと思います。

 慣れない文書校正はとても大変だったと思いますが、きちんと細かく見ていただけたのではないかと思います。

 まあ、筆者が作家ですのでお前がもっと頑張れ、という話ではあるのですが……。


 概ねこのような作業をしつつ原稿とイラストを作成しました。基本的に入稿作業はコピペですので、特筆すべき内容はありません。

 もちろんたいあっぷさんのエディタとリーダーの仕様には翻弄されましたが、これにつきましては本コラムでは割愛させていただきます。


 

3.たいあっぷをやって良かったこと


 筆者がたいあっぷさんのオープニングコンテストに参加して良かったかと問われれば、間違いなく「良かった」と答えると思います。 

 その理由はアルパ閣下先生、並びに紅白法師先生と知り合うことができ、一緒に作業をするという経験をすることができたからです。

 イラストレーターの先生と直接話し合い、作品として仕上げていくという経験ができたことは、今後の筆者の活動において大きな財産になると断言できるでしょう。

 これは出版社様からの書籍化ではまず味わうことのできない経験ですし、それと同時に著者という立場だけでは見えなかった編集さんの仕事の大変さや力量の大切さを身をもって実感することができました。

 このような場をご提供いただいたトレンダーズ様には感謝の言葉しかございません。本当にありがとうございました。



4.最後に


 最後に一点だけ。

 今回はオープニングコンテストというお祭りに参加させていただきましたが、今後もたいあっぷさんに作品を提供し続けるかどうかは未定です。

 理由はいくつかありますが、端的に言うとかけたリソースに対して割に合わなそうだからです。

 これは現在筆者が複数の書籍化作品を抱えており時間的な余裕に乏しいという事情も相まっての話ではありますが、送客数に対する「続きを買いたい」の投票数とその相関がとても残念な推移を示しているからです。まあ、最初から分かっていただろうと言われればそのとおりではあるのですが……。

 ちなみに直接的な金銭以外の見返りを用意して、実質的に票を買うという行為を行えば投票は増える――運営公式Twitterアカウントが許可をしていた!――でしょうが、両先生とも相談の結果筆者たちは行いませんでした。そのような行為は、今後の持続的なエコサイクルの構築には繋がらないと判断しているからです。


 たいあっぷさんはカクヨムさんのようないわゆる小説投稿サイトではなく、作家とイラストレーターの先生をマッチングし、作品を公開することで収益を得る場所であると認識しております。

 もちろん、たいあっぷさんが当初おっしゃっていた理想である「クリエイターへの還元率を高く設定することでお客さんの人数が少なくとも、作家もイラストレーターも最低限生活していける」という状況になれば話は別でしょうが、現時点においてそれは難しそうだというのが筆者の率直な感想です。


 と、何やら最後が若干悪口のようになってしまいましたが、たいあっぷさんは他にはない唯一無二の場所であることは間違いないと思います。収益などは度外視にして、作家とイラストレーターで交流しつつ一緒に作品を作り上げる体験をしてみたい方にはとても良い場所なのではないでしょうか?


 とはいえ、これでけで本コラムを終えてしまっては消化不良だと思いますので、次回はたいあっぷさんを利用していて困ったことや不満なこと、こうすれば良いのではないかといった提案をしたいと思います。

 尤も、多忙につき更新はしばらく先になるかと思われますので、気長にお待ちいただければ幸いです。

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