第49話 表

「じゃあ、お風呂入ってくるから期待しててね。」


「あまり可愛くなると俺が困るんだけどな。」


 玲奈はそう言って部屋を出ていった。そんなに自信があるのだろうか。パジャマに自信も何も無くないか?


「ふぅ……玲奈が作ってくれたご飯、美味かったな。」


 玲奈が泊まることになってカップ麺ではだめだと思い何か作れそうな料理無いかと思っていたらカレールーがあった。


 ちょうどカレーに使えると思う食材もあるしカレーを作ろうと思ったら玲奈に止められた。その時はこんなこと言ってたな。


『あれ?葵、料理できないんじゃないっけ?』


『確かに料理はしてないし、できないが……』


『料理できない人がいきなりしてもほとんど失敗するから葵がしちゃ駄目。それに、私が作ってたものを食べてもらいたいし……』


『そ、そうか。ありがとな。』


『えへへ、私がしたいだけなの!』


 そういうことで俺は何もすることがなかったので玲奈が料理をしているところを見ていたんだが料理していない俺からしてみると凄く手際が良かった。


 玲奈はまだまだだと言うが母さんよりも上手な気がする。おばさんが料理上手で教えてもらっている玲奈もそうなったんだろう。


『出来たよ。』


『いい匂いだ。滅茶苦茶美味そうだ。』


 玲奈が作ったカレーはちゃんとカレーしていて俺が作っていたらカレーしていなかったと玲奈が作った後に思う。


『『いただきます。』』


 パクッ


『どうかな……』


『美味い。母さんが作ったカレーよりも美味い気がする。』


 しかも、ニンジンやジャガイモなどの食材の硬さがすごく好きな感じだ。このカレーを食べたらいつも食べてるカレーが物足りなくなりそうだ。


『そ、そうなんだ……やったっ。』


 玲奈が小さく喜んでくれる。カレー以外にもたまに作ってくれる弁当もすごく美味いからそんなに不安になる必要はないんだけどな。


『お代わり貰ってもいいか?』


『うんっ!ちょっと多めに作ったから大丈夫だよ!』


 あっという間に食べ終わりまだ食べたかったのでお代わりをした。3杯目はさすがに無理だったがそれでも飽きることなく食べれた。


『洗うのは俺がするよ。』


『じゃあ、私は葵が洗った物を拭こうかな。』


 ご飯を作ってくれたのでゆっくりしてもらいたかったのだがやると言ってきかなかった。2人で台所に立ち食器を洗って拭いていく。というかこれ……


『なんだか結婚しているみたいだな。』


『んにゃ!?』


 あ、やべ。そう思ったがもう言ってしまったのでちらっと玲奈の方を見ると顔を赤くしていた。さすがに今のは失言だったかもな。


『結婚……夫婦……葵と私……えへへ。』


『おーい、大丈夫か?』


 その後玲奈はしばらく反応しなかった。元に戻ったかと思ったら恥ずかしかったのだろうポコポコと俺をたたいてくるが全く痛くなかった。


 こんこん


「そ、葵。」


「お、風呂入ったのか。ん?入らないのか?」


 どうやらそんなに時間がたっていたらしい。玲奈はお風呂を入ったようだが部屋に入ってこない。どうしたのだろうか?


「や、やっぱり恥ずかしくて……」


「自信があるパジャマなんだろ?なら絶対可愛いはずだから見せてくれないか?」


 俺に見せるすんでのところで急に恥ずかしくなったのだろうか。家に来る前に自信があるって言ってたからぜひ見たいんだが。


「葵がそういうなら。」


 そう言って玲奈はドアを開けた。いったいどんなパジャマを選んだのだろうか。


「……っ!」


「ど、どうかな?」


 玲奈が着てきたのはウサギを真似たパジャマ。ご丁寧にうさ耳までついている。玲奈が恥じらっていることもあって非常にかわいい。


「あ、あぁ。その、なんだ。」


「な、なに。」


「凄く、可愛いです」


「そ、そうなんだ……えへへ。」


 俺が正直にそういうと玲奈は嬉しそうにした。それに、玲奈が体を揺らすと同時にうさ耳フードが揺れて非常に気になる。


「な、なぁ。」


「どうしたの?」


「その、フード被ってくれないか。」


「ふぇ?」


 玲奈がフードを被ったら絶対可愛くなると思うんだよなぁ。しかし、玲奈はそういわれてると思っていなかったらしい。


「その、被って……ほしいの?」


「あぁ、今も可愛いがもっと可愛くなると思ってな。」


「葵が見たいなら、被るよ。」


「そうか、ありがとうな。」


 どうやら被ってくれるようだ。この前の猫耳フードを被った時も可愛かったから今回のうさ耳フードはその時と同じかそれ以上に可愛いだろう。


 ぽふっ


「ど、どう?」


「やばい、前よりかわいい。」


「えへ、そうなんだ。ぎゅー。」


 ぎゅっ


 玲奈は再度嬉しそうにすると俺に抱き着いてきた。いきなりのことだったので何もできなかった。いったいどうしたんだろうか?


「ウサギってさ、寂しがりで甘えん坊ってよく言うし。今の私はウサギだから葵に甘えちぇって思って。構ってくれないと寂しくなっちゃうな。」


「そうか、寂しいならしょうがないな。いっぱい甘えて寂しくないようにしようか。」


 なでなで、なでなで


「んふふー、まだまだ寂しいなぁ。」


 そう言ってさらに甘えてくる玲奈。それに応じる俺。甘えん坊で寂しがりやなウサギ玲奈になったならしょうがないよな?

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