第48話 裏

「ほんとに今日も泊まらなくていいの?」


「さすがに2日連続はな。たまにはカップ麺でも食べるとするよ。」


 おばさんに頼まれてるし、お母さんもそんなこと気にしないと思う。あまり栄養がないカップ麺よりもちゃんとした料理を食べたほうがいいと思うの。


「むぅ……じゃあ私が葵の家に泊まりに行くのは?」


「おいおい、男1人だけの家に行ったら何されるか分からないんだからそんなこと言うなよ。男は誰だってオオカミなんだよ。」


 何されるか分からない……男の人は皆オオカミ……それって葵オオカミさんになって私を食べちゃうってこと?


 私が死んじゃうってこと?でも何か違うような……そういえばお母さんも男の人は2人きりになると襲ってくるって言ってたような。襲うってまさか……


「オオカミ……葵はオオカミさんになんかならないって信じてるもん……別になってくれてもいいのに……」


「それは俺を信用しすぎじゃないのか?俺だって玲奈がいたら何をするか分からない。それと、最後なんて言ったんだ?」


 葵になら襲われても良いもん。でも、葵って結構ヘタレ?なところがあるからしないと思う。


「な、なんでもないよ!お泊りはお母さんに聞いてOK貰ったら、ダメ?」


「おばさんが良くて、玲奈もしたいなら別にいいと思うが……でも、泊まる場合は万が一俺に何かされても文句言うなよ。」


 お泊りで葵に何かされるのは大丈夫だし、お母さんも多分お泊りして良いって言ってくれるはず。


「分かった。お母さんに聞いてくるね。」


「あ、おい……え?泊まるのか?」


 私はまだ葵と一緒にいたいからお泊りして良いかお母さんに聞くことにした。多分だけどリビングにいるかな。まだご飯の準備をする時間じゃないし。


「お母さーん。」


「どうしたの?」


「葵の家にお泊りして良い?」


 思ってた通りお母さんはリビングでゆっくりしていた。私が葵の家に泊まったらお父さんと2人で過ごせるよね。


「別にいいけど……葵君は良いって言ってたの?」


「葵は私とお母さんがいいなら大丈夫だって。」


「そうなの。私は泊まってもいいと思うから後は玲奈がいいならいいんじゃないかしら。」


 やった、お母さんから泊まっても良いって許可貰ったから、これで葵は何も言えないよね。今日も2人で一緒に寝るんだから。


 私は葵のところに戻る。葵にお泊りできるってこと言ったら今日着る着替えを準備しなきゃ。


「葵、お母さん泊まってもいいって。」


「そ、そうか。後は玲奈が気にしなければ泊まっても良いが。」


「ふふん、私はもうお泊りするって決めてるよ。」


 いつまでそんなこと言ってるのかな。私が泊まりたい言ってるからお泊りするに決まってるじゃん。


「着替え選んでくるね。少し待っててくれる?」


「分かった。まだお腹すいてないからそんなに急がなくてもいいぞ。」


 今回はどんなパジャマにしようかな?この前は葵から貰った猫耳パジャマだったし……うーん、可愛いのあったかなぁ?


「えっと、パジャマは……うぅ~可愛いのあんまりないよぉ。猫耳は2回目だから新鮮味がないし……」


 今度買うときはもう少しかわいいやつ買わなきゃ。いつでも葵に見せれるようにしなきゃね。


「買うといえば……」


 この前お母さんと買い物行ったときに1つだけパジャマ買ってもらったというか、お母さんが買ったというか……とにかくそのパジャマどこだっけ?


「ん~……あ、あった!……けど、これにするのはちょっと……」


 取り出したのはウサギのパジャマ。猫耳のウサギバージョンでしっかりうさ耳もついてる。


 さすがにこれはと思うものの、ふと思った。猫耳パジャマ着た時の葵っていつもより喜んでなかったっけ?


 それなら今回、うさ耳パジャマにすればまた喜んでくれるかな?できれば可愛いって言ってくれると嬉しいなぁ。


「よしっ、これにしよっと。」


 着るパジャマも決まったし早く葵のところに行かなきゃ。時計を見たらすごく時間がたっていてこんなに夢中になってたんだって思った。


「そういうことだから。」


「どういうことですか。それに、そういうのは恋人になってからしたいです。」


「ふーん……いいこと聞いちゃった。やっと葵君から好きって思わせること聞けたわ。玲奈の将来も安心ね。」


「んにゃ!?」


 あ、いけない。大きな声出したら聞こえちゃう。いきなりそんなこと聞こえたからびっくりしちゃった。これって葵とお母さんの会話だよね?


 それにそういうのって……その、エッチなことだよね。さっきまでどんな会話して他の?


「思ってないことも聞けたし、お邪魔虫はそろそろご飯の準備しなくちゃね。あの子も来そうだしね。」


「おじさんといい時間を過ごしてください。」


「あの人と今日のことをお酒でも飲みながら話そうかしら。」


 お母さんが葵から離れて行った。うぅ、どうしよう。今言ったら聞いてたことばれちゃいそうだし……少しだけ冷静になる時間を取ろう。


 私はしばらく階段で冷静さを取り戻していた。よしっ、もう大丈夫!この時間でまた葵を待たせちゃったけどね。


「ふぅ、お待たせ。何にしようか悩んでたら時間かかっちゃった。」


「大丈夫だ。そんなに時間かけたのなら今日の玲奈のパジャマ姿期待することにしよう。」


「うん!葵に喜んでもらうために少し恥ずかしかったけどお母さんと悩んだんだから!」


 葵がどんな反応するか楽しみだなあぁ。

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